かねてから、妊娠していると、新型コロナウイルスに感染して重症化するリスクが増すおそれがあると危惧されていたが、これまではデータ不十分でその真偽が確認できていなかった。
新型コロナウイルスが妊婦に与える影響についての研究の空白を埋めるため、CDCは大規模な調査を実施。15歳から44歳までの女性40万人以上からデータを収集し、分析を行った。そのうち妊婦は2万3434人だった。対象女性は全員、PCR検査で新型コロナウイルスの陽性反応が出ており、症状が現れていた。
年齢、人種、民族、ならびに糖尿病や心疾患、慢性の肺疾患といった基礎疾患に応じて調整が行われた結果、同じ年齢層では、妊娠している女性は、妊娠していない女性に比べて、集中治療室(ICU)に入院する確率が3倍、人工呼吸器を装着する確率が2.9倍だった。
妊婦が新型コロナウイルスが原因で死亡する絶対リスクは、1000人中1.5人と高くはないものの、妊娠していない女性と比べると70%高かった。
このように妊婦が新型コロナウイルスで重症化するリスクが高いのは、妊娠中に起こる生理的変化が要因かもしれない。妊娠中の生理的変化としては、心拍数や酸素消費量の増加、肺活量の減少や免疫システムの機能低下などがある。
妊娠している女性と妊娠していない女性の転帰に最も顕著な違いが現れたのは、35歳から44歳の年齢層だった。
この年齢層では、妊婦が人工呼吸器を必要とする確率は、妊娠していない女性の4倍、死亡する確率は2倍だった。
さらにこの調査では、有色人種の女性が妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると重症化リスクが高くなることも浮き彫りになった。妊娠しているアジア人女性は、妊娠していないアジア人女性と比べて、ICUに入院する確率が6.6倍だった。ハワイ先住民/太平洋諸島系の場合、妊婦がICUに入院する確率は、妊娠していない女性のほぼ4倍。また、ヒスパニック系では、妊婦の死亡リスクは妊娠していない女性の2.4倍だった。
今回の調査では、黒人女性の死者数が、妊娠しているか否かにかかわらず飛び抜けて多いことが判明している。黒人女性の調査対象者に占める割合は14.1%だったが、全死者数に占める割合は36.6%だった。