筆者も「72時間(2泊3日)で目一杯楽しむためのガイドブック」として、2016年に創刊された「Plat(ぷらっと)」シリーズで、これまで旅行先としては考えもされなかった極東ロシアのウラジオストクを取材することができた。おかげさまでウラジオストク編は好評で、版を重ねた。今年春には、JALやANAも初就航を果たし、多くの日本人が極東の地に旅立ったのである。
それらすべてを今回のコロナ禍は振り出しに戻したのだが、人はいつまでも移動するという衝動を抑えられない生き物だろう。
ウィズコロナ、あるいはポストコロナの時代に、コロナ禍を経験した時代を生き抜いたわれわれは、いかにして新しい旅のかたちを生み出していくのだろうか。
2010年代は観光バブルの時代だったことはすでに述べた。観光が「経済効果」を生むという福音を、政府やメディアが過度に広めたせいだと考えているが、その結果、本来あるべき旅の価値がなおざりにされてきたのではないだろうか。
当事者としてそんな悠長な話をしていて大丈夫なのかと言われるかもしれないが、コロナ禍によって突如にして観光バブルが粉砕されたいま、あらためてこの10年間の何が良くて、何が良くなかったのか、振り返る機会にしたいと考えている。
連載:国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
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