特に地方では、高齢者が死亡すると、相続人である子や孫が首都圏などに離れて住んでいるケースも多く、誰も住まない住宅が生まれがちだ。
近所付き合いが希薄になった昨今、遠くに住む持ち主が、誰も住んでいない住宅を管理するには手間と金がかかる。メンテナンスも怠りがちとなり、屋根に穴が空いたり、壁が崩落したりする。その結果、雑草が生い茂り、猫など小動物が住み着いたり、不審者の侵入を許したり、粗大ごみの不法投棄の格好の場所となることさえある。
空き家の改善を促す特措法の制定
神戸市には、現在、10万9200戸の空き家がある。だが、その全てに問題があるというわけではない。このなかには、賃貸や売却の在庫として一時的に人が住んでいない住宅が7万4200戸、同様に空室のマンションが1万5000戸、腐朽や破損がなく活用可能な空き家が1万5000戸含まれている。問題となるのは、残り5000戸の腐朽や破損が激しい空き家だ。
こうした何らかのトラブルが生じている空き家を、行政が管理することはなかなか難しい。あくまで個人の財産であるから、行政が直接手出しをすることができないからだ。
そこで国は、2014年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定した。近隣迷惑となる「特定空家」に認定されると、自治体が持ち主に「指導・助言」や「勧告」を行う。また、著しい危険があると判断されれば、「命令」や「代執行」もできる。
だが、この法律は、あくまで持ち主に管理責任を果たしてもらうことが主眼であり、それを実現するために自治体が何をすべきかを定めているものだ。
神戸市では、2020年3月までの4年間で、近隣の住民などから、危険な空き家があると1580件の通報を受けた。市では、職員が1軒1軒の持ち主を特定して、まずは郵送で、ときには自宅にまで訪問して、建物の補修や草木の伐採など改善してもらうように指導した。
その結果、実際に776件が改善に至った。これは、持ち主が特定できていない383件を除くと、通報を受け付けた65%にあたる。
空き家のままでも固定資産税が増額
2014年に国土交通省が行った調査では、空き家にする理由を持ち主に聞いたところ、「取り壊すと固定資産税が高くなる」という回答が25.8%に達した。
固定資産税に「住宅用地特例」が導入されたのは1973年のことだ。この特例では、「住宅」を建てる際、200平方メートル以下の敷地なら、固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減される(200平方メートル超はそれぞれ3分の1と3分の2)とした。当時は、国民がこぞってマイホームを持ちたいと思った時代であり、政府がその後押しをした形となった。