「自然欠乏症候群」への危機感 DX時代のワークライフバランス

Kohei Hara/Getty Images

三浦知良選手と2トップを組むことを目標にサッカーを始めたが、高校時代に大きなケガをして、私の夢は破れた。その後、ホームレス・ワールドカップやダイバシティ・サッカーに関わるなかで、サッカーが持つさまざまな可能性を探求していたが、3年前、自身の体調不良により、激しい運動をすることを控えるよう医師から助言を受けた。

その頃、平日は全国各地に出張し、国際会議などで海外にも行き、自宅からの出勤時には、子供たちの保育園への送りやゴミ出しも行っていた。そして、土日にはサッカーなどをして、心身のリフレッシュをはかっていた。しかし、医師の助言により、それもままならなくなっていた。

運動といえば、日曜の午後、家族一緒に自宅近くの森や湖畔を散歩することくらいだった。

自然欠乏症候群に気づいた


とある休日の散歩。季節毎に変わる風景、咲く花、野鳥や虫、そして香りを感じながら家族で歩いていると、ふとしたことに気がついた。子供たちが、木、野草、花などの名前をまったく知らないのだ。

あれだけポケモンのことは詳しいのに、例えば、ナズナ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ムスカリ、ツユクサなど、路上に咲く王道の野草、花を知らない。「これは何?」と聞くと、「青い花」などと答える。これはまずいと妻と話をして、散歩ついでに「自然探検隊」と称して、毎週2〜3つの花や木、鳥や虫を教えていった。

自然関係の図鑑を準備しようとしたら、すでに長男はアレクサに「ナズナって何?」と問いかけている。アレクサは、「辞書によると、アブラナ科ナズナ属の越年草。別名、ぺんぺん草……」と答える。

これを見て、私はさらに強い危機感を覚えた。これは、『Last Child in the Woods:Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder』(2005年)という本で読んだ「自然欠乏症候群(Nature Deficit Disorder)」というものではないかと。

自然欠乏症候群。それは、自然とほとんど意味のある接触がなく育った現代の子供たちは、身体的・精神的な問題を抱えやすく、近所にある川の自然のことは何も知らないが、アマゾンの熱帯雨林やカリフォルニアの森林火災のことは知識として知っているというものだ。
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文=蛭間芳樹

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