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「SPAC(特別買収目的会社)」とは、自らは事業を経営せずに、非公開会社を従来の新規上場(IPO)プロセスを経ずに上場させるためだけに設立されるダミー会社のことで、一般投資家のファンドを束ねて、一定期間内に合併やレバレッジドバイアウトのための資金を調達しようとする方法だ。

SPACは「ブランク・チェック・カンパニー」とも呼ばれるが、1720年の南海泡沫事件で英政府が呼び掛けた「将来が明るいが、誰も事業の実態を知らない企業」への投資との類似点はない。SPACの場合、投資家は不特定の企業買収に対して資金を投じるが、南海泡沫事件よりも至極妥当な保証がある。

SPACの標準的な仕組みでは、投資家は提示された取引の中から好きなものを選ぶことができ、提案が気に入らない場合は資金を引き上げることもできる。さらに、取引するか資金を回収するかを決めるまでには2年の期間があり、資金はその間、エスクローに預けられる。SPACの経営陣は原則として、資金を全額手にすることはできない。また投資家を説得できなかった場合、その計画を進めることはできない。

私がSPACに注目している理由は、今年かつてないほど盛んに行われているからだ。SPACによるIPOは、2019年は58件、2018年は41件、2017年は33件だったが、2020年は10月中旬までに141件も実施された。SPACには、チャマス・パリハピティヤやリード・ホフマンといった投資家も関わっている。こうした「投資熱」を受け、市場が過剰流動性の投資機会を少数の投資家に提供しているのではとの懸念が生じ、これが機会の追求、さらにはバブルにつながる恐れを指摘する声も出ている。

SPACは多くの場合、経験豊富な人物に頼って対象となる企業を特定した上で、それに投資するのみならず、買収や合併を通じてその株式を公開する。その意味でSPACは、とりわけ安いわけではない。というのも、SPAC経営者は通常、実行時に調達資金の20%を保持するからだ。だが、これによりIPOとそれに伴う遅延と不確実性の必要性はなくなる。2020年は多くのベンチャーキャピタル・ファンドがSPACに興味を示したため、件数の増加につながった。

将来的には、相当数のSPACが実行されることが予想される。SPACの設立や、SPACが取り付けた合併・買収の契約合意を巡るニュースが多く流れることだろう。これは、従来の方法と比べかなり手っ取り早く投資家と起業家の両方に機会を提供し、市場を活性化する方法なのだ。他と同じようにSPACにもリスクはある。これはバブルなのか? バブルではないのか? 投資家の狂気か? ファンドが簡単に儲けられる方法を追求しているのか? それとも機会に満ちた市場なのだろうか?

編集=遠藤宗生

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