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2020.09.03 11:30

若者熱狂の株アプリ「ロビンフッド」に調査、罰金10億円の可能性

dennizn / Shutterstock.com

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ミレニアル世代に人気の株取引アプリ「ロビンフッド」が、米国証券取引委員会(SEC)の調査を受けている。9月2日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると同社は、顧客の注文データを外部の超高速取引業者(HFT)に販売している事実の開示を怠っていた。

取引手数料無料をアピールするロビンフッドは、投資経験の浅い若者たちをアプリ経由で株取引に引き込み、前例のない規模の成長を遂げてきたが、また新たなトラブルに見舞われた。

ロビンフッドは顧客の注文データをシダテルやトゥーシグマなどの超高速取引を行う企業に販売しているが、その情報を正しく開示しておらず、SECは同社の行いが民事詐欺に該当するかどうかの調査を進めている模様だ。

関係筋がWSJに語ったところによると、ロビンフッドがSECとの和解を決定した場合、1000万ドル(約10億円)以上の罰金支払いを命じられる可能性があるという。

フォーブスが先日掲載した記事では、ロビンフッドが「金融の民主化」を謳いつつも、顧客データをウォールストリートの悪名高きサメたちに外販することで、収益をあげていることが明かされた。超高速取引業者らは、ロビンフッドのような企業に対価を支払って顧客の注文データを入手し、株式市場の一瞬先の動向を知ることで莫大な利益をあげている

同社は今年第1四半期に1億3000万ドルの売上を叩き出したが、その70%がPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)と呼ばれる顧客の注文データの外販による収益だった。

ロビンフッドのPFOF売上は、今年第2四半期には前四半期の約2倍に膨らみ、1億8000万ドルに達していた。同社の競合であるチャールズ・シュワブやイートレードもPFOFの外販を行っているが、売上に占める比率はそれぞれ約3%と17%に留まっている。

PFOFの外販というビジネスモデルを考案したのはロビンフッドではないが、同社が競合と異なるのは、外販先のマーケットメイカーがトレーディングであげる収益から一定のパーセンテージを受け取っている点だ。

関係筋がWSJに語ったところによると、SECとの取り決めが今月中に発表される可能性は低く、ロビンフッドはまだ提示された罰金について、正式な交渉を進めていないという。

創業7年で企業価値は1兆円突破


ロビンフッドは今年3月に発生したシステムトラブルの責任を問われ、複数の訴訟にも直面している。同社はシステムの管理を怠ったとして、SEC及びFINRA(金融取引業規制機構)からも調査を受けている。

さらに今年6月にはAlex Kearnsという名の20歳の若者が、ロビンフッドで73万ドルの損失を抱えたと思い込み、自殺するという悲劇的な事件が発生した。

新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、米国人の多くが自宅にこもりがちになる中で、新規会員を急激に増やしたロビンフッドは年内にIPOに踏み切ると囁かれている。

同社は8月17日、新たに2億ドルの資金調達を実施したことをアナウンスした。ニューヨーク本拠のD1 Capital Partnersが主導するシリーズGラウンドで、創業7年のロビンフッドの企業価値は112億ドル(約1兆1900億円)とされた。

編集=上田裕資

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