選挙前の変動
Quantpediaの研究チームは、選挙前の市場における変動の証拠を発見した。選挙直前の5日間、市場は概して上昇傾向を示したというものだ。チームは、1950年から2018年までのあいだに35回行われた米国の選挙(大統領選と中間選挙の両方を含む)について分析した。
過去の選挙において、選挙直前の5日間に、市場(S&P500)は平均して約2.5%のリターンを出していた。小さな数字に思えるかもしれないが、これが安定した傾向だとすれば、5日間の取引に対して比較的魅力的なリターンだといえる。興味深いことに、この上昇は選挙前に起こるようだ。過去のデータを見るかぎり、選挙直後の市場に方向性はない。
このような定量的分析がある一方で、未解決の疑問は常に残る。今回は特別だろうか? ことによるとその可能性はある。というのも、こうした定量的分析に基づいて取引しようとする投資家が、以前より多くなっているからだ。
また、選挙前の上昇パターンは、月の変わり目に上昇傾向になる「月初効果」と区別しづらい。一般に月の最初の数日は、選挙の有無にかかわらず、市場が好況を示すのだ。そのため、上昇の原因が本当に選挙なのか、それとももっとありふれた月初効果なのかは、はっきりしない。それにもちろん、2020年の選挙はいろいろな意味で特別であり、過去の歴史はあまり参考にならないかもしれない。
国際的視点で見ると?
米国市場においてこうしたトレンドが観測された場合、国際的視点から妥当性を検証することが役に立つかもしれない。アンジェラ・オパレ(Angela Opare)は、欧州の複数の株式市場を対象に同様の研究をおこない、おおむね似たようなトレンドを見出した。
オパレの研究は、1990年から2012年のあいだに選挙を実施した欧州13カ国が対象だが、こちらでも、平均すると選挙の直前に市場が上昇し、直後に下降する傾向がみられた。具体的には、選挙前の15日間はポジティブなリターンに、選挙後の15日間はネガティブなリターンになる傾向が観測された。
また、意外ではないが、選挙の前後に市場のボラティリティが高まる傾向も示された。この研究は、Quantpediaの調査とは期間設定が多少異なるものの、2つの結果はおおむね一貫性がある。