鮮やかな色の象形文字や装飾が施された木棺は、古代エジプトの首都メンフィスのネクロポリスに存在した広大な埋葬地サッカラの縦穴から発掘された。調査の結果、木棺は2600年前から一度も開封されていないことが確認された。
木棺は、深さ約10~12メートルの縦穴3本の中に積み上げられた状態で見つかった。こうした穴は、紀元前664~525年のエジプト第26王朝に聖職者や政府高官などのエリート層の埋葬に使われていた。
研究チームは今月、棺1基を開け、中に完全な状態で保存されたミイラを発見した。ミイラが包まれていた埋葬用の布には、象形文字の銘が鮮やかに残されていた。米考古学誌アーキオロジーによると、この棺は書記の神であるジェフティ(トト)に使える神官ジェフティ・イムホテプのものだった。
穴には棺の他に、冥界の神であるプタハ・セケルの彫像が20個以上、護符、仮面、死者の死後に農業を営むと信じられていたウシャブティの人形など、古代エジプト人の死後の世界へのこだわりを示すさまざまな品々が納められていた。発掘作業が進むにつれ、さらに多くの棺や遺物が見つかることが期待されている。
棺は、2021年に待望の開館を迎える世界最大の考古学博物館「大エジプト博物館」に所蔵される予定だ。ギザのピラミッド近くの砂漠地帯に建設された同館は、3Dの映画館や子ども向けのインタラクティブ施設を備える他、ツタンカーメンの墓から見つかった数千点を含む古代エジプトの遺物10万点以上を展示する予定だ。