オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)傘下の研究所、豪疾病予防センター(ACDP)の研究チームは先ごろ、専門誌Virology Journalに論文を発表。複数の素材に付着させたSARS-CoV2の生存期間が、気温によってどのように変化するかを調べた結果を明らかにした。
実験で使用された素材と、それが一般に使用されている身近なものは、次のとおり。
・紙、ポリマー(紙幣、ポリマー紙幣)
・ステンレス鋼(キッチン、公衆トイレなど)
・ガラス(窓、携帯電話・パソコン・ATM・セルフレジなどの液晶画面)
・ビニール(携帯電話のスクリーンプロテクター、乗り物や建物内の手すり、テーブル、床材)
・木綿(衣服、ベッドリネンなど)
研究チームはまず、それぞれの素材を1〜1.5平方センチメートルに切断。消毒した後にペトリ皿に入れ、SARS-CoV2のサンプルを付着させた。このサンプルは、ヒトの体内に侵入した場合と似た環境で観察するため、あらかじめヒトの分泌物に代わるウシの血中タンパク質とムチン(動物粘液の構成成分)、トリプトン(牛乳のタンパク質カゼインを酵素トリプシンで加水分解)で希釈しておいたものだ。
また、SARS-CoV2の死滅が光によって早められることないよう、実験は暗室で行い、湿度は50%に設定した。気温は20°C、30°C、40°Cとし、それぞれの場合での1時間後、1・3・7・14・21・28日後のSARS-CoV2の状態を調べた。
気温上昇で生存率が低下
実験の結果、20°C(通常の室温に近い)の場合、SARS-CoV2は多孔質の木綿を除くすべての素材の表面で、28日後にも生存が確認された。木綿にSARS-CoV2が残存していたのは、14日目までだった。検出可能なウイルス量は、木綿は5.5日後、紙幣は9.1日後には、実験開始時の10%にまで減少していた。