フィレンツェといえば、芸術や文化が花開いたルネサンス発祥の地で、世界の美しい都市の一つと言われる街。当時、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ジョスカン・デ・プレ、ジョバンニ・ガブリエリなど素晴らしい芸術家や音楽家、建築家たちが活躍しましたが、多くの歴史学者たちは、ルネサンスの始まりには「ペスト(黒死病)」が大きく関係していると説いています。
14世紀に大流行したペストは、当時のヨーロッパの人口を3分の1にした感染症と言われており、フィレンツェでも人口の半分近くの人が亡くなりました。
人々が悲しみに暮れるなか、宗教信仰による教会中心の拝金主義や封建的制度の崩壊が加速。教会中心ではなく、人間らしさを追求する意識が動きが政治や芸術にも浸透し、新たな機会が生まれ、創造性が刺激されたことでルネサンスが発展していきました。
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また、この時代、食文化にも大きな変化がありました。
それまでのヨーロッパは、食器といえば木や錫でできた皿程度で、そこに盛ったものを手で食べたり、固いパンの上に料理を乗せて食べたりしていました。中世ヨーロッパでは、食べ物に触れていいのは人間の手のみであり、道具を使うのは神への冒涜だという考えがあったためです。
しかし、感染予防のためなのか、この時代から食器として陶器が使われるようになり、個人用のテーブルナイフやフォーク、スプーンなどのカトラリーも普及しました。また、テーブルクロスやナプキンなどを使用し、手や口などを拭きはじめたようです(もちろん衣類が汚れないためでもありますが)。
それはすなわち、現在の西洋料理のテーブルマナーの基礎とも言えるもの。現在は、「食事中に相手を不快にさせないため」などと少しこむずかしいイメージが強いマナーですが、その始まりは「食事からの感染を避けるため」でもあったと考えられています。