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2020.10.05

DXを活用した経営構造改革をCVCが加速させる

KURONEKO Innovation Fundは、専務執行役員/経営戦略統括 経営構造改革担当の牧浦真司(中央)を中心に7名で構成。プロパーと外部採用の混成部隊として、ダイバーシティを醸成している


スタートアップの空気を体感することも重要


現在、CVCのメンバーは7名で、プロパーと外部採用の混成部隊として、ダイバーシティを醸成。スタートアップとの面談数は4月からで3桁に及ぶ。なかでも、プロパーのメンバーはスタートアップから早くも大きな刺激を受けている。

「私は営業出身で、CVCに関わるとは想像もしていませんでした」。メンバーの森憲司は言う。「スタートアップ経営者は自分と年代も近く、とにかくスピードが速い。あらゆる面で刺激を受けています」

こうした反応も、牧浦の計算のうちにある。

「ここで3年やったら、どこでも行ける、と彼らには言っています。経営構造改革には外部のリソースも必要ですが、合わせて企業風土を刷新する必要がある。それには時間がかかりますが、スタートアップのスピード感を体感してほしいですし、ベンチャーキャピタリストとして資本市場と接点を持つという経験は、経営人材になるためには不可欠です」


スタートアップ企業をゲストに招いた「イノベーションミーティング」は、これまで約15回を開催している

21年4月、ヤマト運輸は、自社を含むグループ7社の間で吸収合併および吸収分割し、リテール・地域法人・グローバル法人・ECの4事業本部と、4つの機能本部のマトリックスに変わる。経営構造改革を体現する組織であり、従来とはまったく異なる経営形態になるに等しい。

「様々な仕掛けをしなければ、大きな組織を変えるのは難しいです。CVCを進め、我々の知見が生きるのであれば、スタートアップに人材を送り込むことも検討します。社員がスタートアップの空気を体感することも大事で、特にスピード感覚は吸収してほしい。大企業には最も欠けているものですから」

ヤマトの変革をドライブするのは、牧浦の言葉を借りるならプロパー入社して突然変異を遂げたミュータントと、外部からやってきたエイリアン。その双方をもたらしうるCVCから、目が離せない。


ヤマトホールディングス◎1919年にトラック輸送業として創業したヤマトは、76年に小口貨物の特急宅配システム「宅急便」を開始。2020年3月期の売上高は約1兆6301億円。従業員数は約22万人。20年4月1日にCVC「KURONEKO Innovation Fund」を立ち上げた。

α TRACKERS(アルファトラッカーズ)◎独立系VCのグローバル・ブレインが2018年12月に設立した、オープンイノベーション推進に積極的な大企業を集めたコミュニティ。日本を代表するCVC運営企業をネットワーク化して各社の活動を支援していく。参画企業はKDDI、三井不動産など35社。Forbes JAPANはメディアパートナーとしてかかわる。

文=間杉俊彦 写真=若原瑞昌

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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