陸軍の元兵士でシアトルにある法律事務所の共同創設者だった父のウィリアムについて、ゲイツは、彼が妻と立ち上げた慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を設立する上で、欠かせない存在だったと回想した。
「妻のメリンダと私は、彼に特別な借りがある。彼が地域社会や世界に奉仕することに尽力してくれたことが、私たち自身の慈善団体を立ち上げることにつながった」とゲイツは述べた。
ウィリアムは、2000年に設立されたビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同会長を務めていた。
今から4年前に筆者はウィリアムにEメールで取材を行い、彼がどのようにしてビル・ゲイツを育てたか、そしてビル&メリンダ・ゲイツ財団の設立にあたり彼が果たした役割について尋ねていた。
ウィリアムは当時、次のように書いていた。
私の亡き妻メアリーは、ルカによる福音書に記された「多くを与えられた人は、多くのことを期待される」という教えを固く信じていた。彼女はこの教えを、私たち家族の重要な価値観として植えつけてくれた。
マイクロソフトで富を築いた息子のビルとその妻のメリンダは、地元シアトルの非営利団体から寄付を求める手紙を何通も受け取るようになった。しかし、その当時の彼らは子育てをしながらフルタイムでマイクロソフトに関わっており、プライベートな財団の運営に時間を割けなかった。
その頃の彼らは、ビルが経営から退いたら慈善活動に本格的に取り組むつもりだった。しかし、そこで転機となったのが妻のメアリーがガンを患い1994年に他界したことだった。私はその後、法律事務所の仕事をリタイアした。
それから数カ月後、みんなで映画館に出かけ、列に並んでいるときに私はビルとメリンダに、彼らの慈善活動を手伝えるかもしれないと提案した。私にとっては退職後の楽しみになるだろうし、彼らにとっても私に寄付の割り当ての仕事を任せれば楽になると考えた。
それから1週間ほど経って、電話で話しているときにビルはこう切り出した。「父さん、僕らは財団を立ち上げて、1億ドルを用意することにしたよ」と。
私はそれを聞いてびっくりしたけれどとても嬉しかった。それから間もなく、私は最初の小切手を書いた。それはガン治療に関わる地元の団体宛ての8万ドルの寄付だった。
父の死去を伝えるインスタグラムの投稿を、ゲイツは次のように締めくくっている。「彼こそが本物のビル・ゲイツだった。私は彼のような人になりたいと思って生きてきた」