「本当に大切なものは何か、必要なものは何か」を真剣に考えることで、消費行動にも自ずと変化が表れてきた。必要とされるモノやコトが大きく変わろうとしている中で、企業にとってはどのような価値観を消費者と共有し繋がっていけるかが、今後の重要なカギとなるだろう。
社会の課題と向き合い「等しい価値観」で繋がるコミュニティ
今夏、東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)」にオープンした「イコーランド シブヤ(EQUALAND SHIBUYA)」は、今まさに模索されている生き方を個々に問いかけ、消費者と生産者が互いの価値観で繋がる場を生み出している。
「イコーランド シブヤ」では、サステナブルなファッションを提案するオリジナルブランド「イコーランド トラストファッション」の商品も販売している。
この店を運営するPRエージェンシー、株式会社ワンオーの代表取締役、松井智則氏は言う。
「これまでファッションから行政まで様々なクライアントのブランディングとコンサルティング業務に携わってきましたが、事業の幅が広がり、関わるコミュニティが増えるにつれて、それぞれをネットワーク化することによって社会の課題も解決していけるのではないかと考えるようになりました。そうして思いついたのが、equal(平等)とland(土地)を合わせた「Equaland(イコーランド)」の名称です」
「Equaland(イコーランド)」とは、「等しい(equal)価値観で繋がる人たちが集まっていく」ことを目的とするプロジェクトの総称だ。つまり、同じ価値観を共有する人々が立場や枠組みを超えて集い、協働し、社会の問題を共に解決していこうとするコミュニティの創造である。では、そのコミュニティを形成する価値観の軸となるものは何か?
「TRUST(信用)です。本来、ファッションは文化であり美意識であり、かつては一種のアートのような存在でした。僕が若かった頃は、デザイナーには明確な哲学があり、その哲学こそが信用に繋がっていたと思います。しかしながら、大量生産、大量消費が進む中で、かつてのファッションの在り方が崩れてしまった。僕たちは今、ファッションの何を信用したら良いのだろうと考えると、商品の背景にあるストーリーや生産工程、携わる人の人柄だったりするのではないでしょうか。もちろん、今も真摯に哲学を持ち続けて制作するデザイナーも含まれます」