ビジネス

2020.09.09

「コミュ障」のまま、仕事で一流の結果を出し続ける方法

キャスター取締役 石倉秀明氏(写真右)とJリーグ栃木SC取締役/マーケティング戦略部長 江藤美帆氏(左)


石倉:コミュ力が高いか低いかという話と、コミュニケーションがきちんと取れるかどうかという話は別だと思うんです。みんなそこを混同しているから、そういう勘違いが起きるんだろうなと。

僕はこれまで1万人以上と面接をしてきましたが、それでも面接の場だけで、相手のことをきちんと見極められているのかと聞かれたら、自信はないです。それに、面接で上手に話せる人は、面接という場のコミュニケーションが得意なだけである可能性があるので、仕事ができるかどうかは全く別だと思うんですよ。

かつて、人事をやっていたときにも、たくさんグループディスカッションの場に立ち会いましたが、全然喋らない人が実はすごく良い視点を持っていたり、逆に上手に喋って場を仕切っていたのにその話の内容が浅かったりする人もいました。だからキャスターでは、採用フローに「一緒に働くこと」を盛り込んで、お互いの相性や実務能力を見るようにしています。

──マネジメントという立場のお2人は、一緒に働く人に対してコミュニケーション能力を重視しますか?

えとみほ:コミュ力が高いか低いかだけを重視することはないです。ただ、コミュ力がどうしても必要な仕事ってありますよね。

私自身、前職のIT企業では、デスクワークが多かったので、目の前の仕事に向き合いさえしていれば大丈夫でした。でも、現在は気配りすべきステークホルダーが多いので、ある意味「接客業」と捉えています。だから、他人から感じが悪く見えてしまう人にとっては、難しい仕事なのかなと思っています。

石倉:コミュニケーションには、共通のゴールを目指す「目的遂行型」と、人間関係を築いていく「関係構築型」の2つがあると今回の書籍で書きましたが、おそらく、えとみほさんのようにスポーツチームで働く人は、どちらかというと「関係構築」が得意な人の方が向いている気がします。

仕事で成果を出したり、うまく人生を歩んでいくためには、自分の得意なところで勝負したほうがいいと僕は考えています。でも、得意なところで勝負するためには、そもそも自分は何が得意で、何が苦手かをメタ認知しないといけない。そのためには、仕事で求められることや必要になるスキル、コミュニケーションの要素を因数分解して把握することが大事だと思っています。

えとみほ:結局のところ、どんな場所で働くのかによって、求められるコミュニケーションの中身は左右されますよね。そこまでコミュ力がなくても十分に務まる仕事もありますから。

石倉:本当にそうですよね。コミュニケーションが苦手でも、人の気持ちを察することができなくても、この「要素の因数分解」さえしっかりできれば、対応すべき課題や進むべき道が見えてくる。そうすれば、仕事で結果を出せるようになるし、得意なことで勝負ができるようになれば、生きること自体がずっとラクになると僕は考えています。

コミュニケーションが苦手だと思い込んでいる人たちに、そんなことが伝わってくれたら嬉しいです。


石倉秀明(いしくら・ひであき)◎株式会社キャスター取締役COO。リクルートHRマーケティングでHR領域の営業、営業企画、事業企画、マネジメントなどを経験。リブセンスでは、主力事業ジョブセンス(現マッハバイト)のマネージャーとして史上最年少のマザーズ上場に貢献した。DeNAでは、EC事業本部の営業責任者、新規事業、採用責任者などを歴任。働き方や個人のキャリア、仕事術、会社組織、リモートワークなどをテーマに記事の執筆やセミナー講師、ニュースのコメンテーターなども務める。

江藤美帆(えとう・みほ)◎栃株式会社栃木サッカークラブ(Jリーグ所属「栃木SC」)、取締役マーケティング戦略部長。株式会社ノジマ、社外取締役。米国にて大学卒業後、Microsoft、GoogleなどのIT企業勤務、起業などを経て、広告代理店在籍中にWebメディア「kakeru」を立ち上げ初代編集長に就任。その後同社にてスマホで写真が売れるアプリ「Snapmart」を企画開発。上場会社への事業譲渡後、スナップマート株式会社代表取締役に就任。2018年5月より現職。JリーグクラブのtoC向け事業(チケット・ファンクラブ・商品化等)を統括。近著に「アスリートのためのソーシャルメディア活用術(共著・マイナビ出版)」がある。


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文=村上広大 撮影=伊藤勝巳(石倉)

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