ウイルス感染リスクを判断するツールには、健康コードのほか、「行動追跡コード」がある。これは、個人の移動履歴に基づいて、感染リスクを三段階で判定するツール。個人の位置情報、交通ICカードの利用履歴、公民身分証などの個人情報に照合し、感染者が出た場合、接触者を特定することができる。
公民身分証というのは、中国が発行している統一の身分証明書で、そこに書かれている18桁の数字はすべての中国人が誕生した時に与えられるもので終生変わらない。番号を決めるのは戸籍を管理する公安(警察)で、戸籍登録地、住所地、性別などから決める。
中国人が社会生活を行う時、公民身分証が使われる場面は実に多い。銀行で口座開設するとき、飛行機や高速鉄道の切符を購入するとき、搭乗・乗車する時、納税のとき、また家の賃貸契約時など様々な場合で利用されており、1枚のカードに個人の公的サービス利用履歴、購入履歴が吸い上げられているといえる。
コードが提出できずバスに乗れない高齢者
ところで、健康コードに関連して中国のポータルサイト「百度」に次のような記事が掲載されていた。今年7月下旬、遼寧省大連市で地下鉄に乗車しようとした一人の高齢者が、駅員に健康コードの提示を要求されたが、何のことかわからず、「健康コードとは何ですか。あなたからもらっていませんし、どこからももらっていません」と答え、再度要求する駅員との間で押し問答になった、という。
これより前の3月には江蘇省でバスに乗車しようとした何人かの高齢者がスマホをもっておらず健康コードを提示できなかったため、バスに乗れなかったという出来事が起こっている。この時、別の人がスマホをもっていたが、健康コードの表示方法がわからなかった。それを見た乗客の一人の高齢の女性が助け舟を出したが、長い時間かかっても登録が完了できず、その間約20分間バスは停まったまま。他の乗客はついに我慢の限界がきて、バスの発車を遅らせる原因をつくった当の高齢者に罵声を浴びせ始めた。最後にその人はよろよろとバスから下車したという。
ちなみにホテルにチェックインする時にも健康コードの提示が求められる。8月27日付のインターネットの封面新聞によると、四川省自貢市に旅行で訪れた75歳を含む高齢者30数名のグループがフロントで健康コードを提示できず、ホテルはチェックインができなかった。ホテルの規約では健康コードの提示があって初めてチェックインの手続きをすると定められているからである。しかし、気分を害した客とホテルとの対立が延々と続き、ホテル側はやむをえなく派出所に助けを求めた。