最近では、PC疲れやスマホ疲れに悩む人々に向けて、一定期間パソコンやスマートフォンと距離を置くことを意味する「デジタル・デトックス(digital detox)」などが推奨されているが、デジタルデバイスは私たちの日常生活に完全に浸透しており、実践するのはなかなか難しい。
だとすれば、デジタルデバイスを上手く活用することで、充実した生活を送ることができるように環境を整えるのが最適解だと言えるだろう。「デジタル」を「毒」にするのも「薬」にするのも使う人の工夫次第のはずだ。
鈴木は人生を元気にするためにデジタルを積極的に人生に取り込む生き方を「デジタブルライフ」と呼ぶ。
「デジタブル」とは、野菜を意味する「ベジタブル」と「デジタル」を掛けあわせた鈴木による造語だ。「ベジタブル」の語源を遡ると、ラテン語で「元気づけるもの」という意味があるが、鈴木は「デジタブル」という語に「デジタルを活用した体に良いもの、元気づけるもの」という意味を込めている。
人生100年時代と言われる現代にこそ求められる「元気で豊かな人生」。それを可能にする「デジタブルライフ」のコンセプトを、鈴木はどのようにして思い至ったのだろうか。
「仕事人間」に訪れた新型コロナウイルスという転機
元々、私はいわゆる仕事人間だった。つい数年前までは朝から深夜まで働き、週末にのみ家族と過ごすというような生活であった。50歳を過ぎてから半生を振り返り、3年前の2017年3月にデジタルシフトウェーブを起業。この会社は、日本の「デジタルシフト」を前進させることを目的としたコンサルティング会社だ。
起業からちょうど3年が経ち「コロナショック」に見舞われた。「デジタルシフト」を支援する企業であるわれわれは、得意分野であるデジタル技術を徹底的に活用することで、幸いなことに「働き方のニューノーマル」の可能性をいち早く享受することができた。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちは半ば強制的に「新しい日常」へと投げ込まれたわけであるが、幸運にも私は今「デジタル」の力に支えられることで、仕事と生活のバランスがとれている。
「新しい日常」によって、私の仕事風景は一変した。それは仕事人間だったつい数年前までには考えられなかった生活だ。
半年前までは夢でしかなかった「新しい日常」
コロナ禍の夏のある月曜日のこと。私の「新しい日常」の一例だ。
朝食を終えてコーヒーを片手に仕事部屋に入ると、PCから社員たちの「おはようございます」という明るい声が聞こえてくる。月曜日の朝といえば、満員電車に乗って通勤してくる社員達にはどことなく疲労感が漂っていたものだが、今はそんなこともない。
会議の中ではディスカッションが以前より進むようになった。意見はオンライン上のボードに書き込まれていくので、議事録をわざわざ作ることもない。会議の映像は録画されているので、休暇を取っている社員は次の日にでも確認することができる。
会議終了後、今度はクライアントとのリモート会議。移動時間が無いので効率がとても良い。以前はクライアントへの提案資料は紙に印刷していたが、今では画面に映し出すだけだ。印刷時間も紙代も大幅にカットされた。
昼12時を過ぎた頃には、妻がテーブルの上に昼食を用意してくれていた。食事を終えると、5歳の息子にせがまれ庭でキャッチボール。数年前と比べて、息子とコミュニケーションをとる機会は格段に増えた。
リモート会議で移動時間がなくなったので仕事の効率はアップした(Shutterstock)