トコペディアの企業評価額は70億ドル(7500億円)。米国のコンサルティング企業「CBインサイツ」によれば、同社はシンガポールの「グラブ」とインドネシアの「ゴジェック」に次ぐ東南アジアで第3位の企業価値を持つユニコーン企業だ。GMV(流通総額)はこの5年間で100倍に伸びており、2019年は推定222兆ルピア(約1兆7000億円)。月間アクティブユーザー数は約9000万人で、国の人口2億6000万人の約3分の1に及ぶ。
事業モデルは「アリババ」と似たもので、どんなビジネスにもオンラインショップを立ち上げ、商品を販売する場を提供するというもの。これまでに起業したての小さな企業から国内の大企業、多国籍企業まで700万の販売業者が出店している。
創業者でCEOのウィリアム・タヌウィジャヤ(38)はここ数年、トコペディアをEコマースの枠を超えたフィンテック、旅行予約、物流といった分野に拡大している。東南アジア最大の規模を誇るインドネシアの1兆ドル経済に定着するため、18年には小さな露店、「ワルン」のオーナー向けに開発されたアプリをリリース。すでに100万回以上ダウンロードされている。また、19年には国内のEコマースサイトと関連事業を推計3000万で買収した。
タヌウィジャヤにとっての最大のステップはIPO(新規公開株式)だ。早ければ今年中に実現し、そうなればインドネシアが擁する5社のユニコーン企業で最初の株式公開となる。すでに今四半期、推定15億ドルの資金調達を行って上場に備え、昨年は、アグス・マルトワルドジョを監査役会長に任命した。マルトワルドジョはインドネシアで最も尊敬を集める金融人。財務大臣と中央銀行総裁の両方を経験し、国内有数の大手銀行であるマンディリ銀行を5年にわたって運営してきた人物。この一手は、トコペディアの信頼性を大きく高めるものだ。
IPOはタヌウィジャヤにとって、昨年創業10周年を迎えたトコペディアの会社づくりの到達点だ。
「Eコマース企業を目指すどんな企業にとっても助けになるテクノロジー企業になることが、この10年のビジョンでした」とタヌウィジャヤは語る。
ジャカルタの中心部にある「トコペディア・タワー」。この52階建てのビルにはトコペディアの本社も置かれており、CEOで創業者のタヌウィジャヤは、最上階で執務している