ビジネス

2020.09.04 07:30

ソフトバンクが賭ける「アリババの再来」東南アジア第3位に化けたユニコーン企業

Forbes JAPAN編集部

バイトの苦労の中で見つけたもの


タヌウィジャヤは、北スマトラの小都市プマタンシアンタールの出身だ。高校卒業後、ITを学ぶためにジャカルタのビナヌサンタラ大学に進学。2年生のとき、たばこ工場で働いていた父親ががんを患ってからは、生活のためにネットカフェでアルバイトをするようになった。インドネシアではまだ、ネットが不便で利用料金が高かった時代。苦労はしたが、この時、インターネットについて学ぶチャンスを得た。

07年、タヌウィジャヤは、インドネシア中のどこで暮らす人でも簡単にオンラインで商品を販売できるサイト、というアイデアを思いついた。大学時代の友人レオンティナス・アルファ・エディソン(38)に声をかけ、2人は「Tokopedia」のドメインを登録。インドネシア語で「店」を意味する「toko」と「pedia」を組み合わせた造語だ。

当時、コンテンツ・プロバイダーの「PTインドコム・メディアタマ」でフルタイム勤務していたタヌウィジャヤとエディソンは、上司だったビクター・ファンコンにエンジェル投資家になってもらえないかと頼んだ。当初は懐疑的だったファンコンだが、09年に10億ルピアを出資した。

創業初期、トコペディアの従業員はタヌウィジャヤとエディソンを含めて4人、販売業者は100に満たなかった。それが、立ち上げから1年でインドネシアの投資会社「イースト・ベンチャーズ」が同社に投資、アリババやインドのセコイア・キャピタル、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなどがそれに続いた。

トコペディアの基本サービスは無料だ。しかし、13年からは黒字化のために有料サービスを構築、有料プレミアムサービスの提供を始めた。そこでは、料金を支払えば、販売業者は宣伝広告や送料無料、トコペディアによる市場リサーチといった特典を受けられる。19年にはそれとは別に偽造品対策の提供も始めた。料金は売り上げの15%と高額だが、キング・コイルやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、サムスンといった大手多国籍企業に人気だ。

次の10年、トコペディアはどこへ向かうのだろうか。タヌウィジャヤはこう話してくれた。

「インドネシアのすべての企業が、トコペディアをパートナーに持つことでテクノロジー企業になる。それが私たちのビジョンです」


トコペディア◎インドネシアの首都ジャカルタに本部を置くEコマース企業。2009年、北スマトラ出身のウィリアム・タヌウィジャヤが、大学の友人レオンティナス・アルファ・エディソンとともに創業した。トコペディアのロゴのフクロウは、タヌウィジャヤが大学時代にアルバイトをしたネットカフェでの夜勤シフトの経験から生まれた。

文= ウリサリ・エスリタ & エスター・クリスティン・ナタリア 写真=ウリ・ズルカナイン 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事