ウーはニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した「A TikTok ban is overdue(ティック・トック禁止はとうの昔にやるべきだった)」と題する記事で、筆者が前々から唱えてきたものと同じ強硬論を展開した。それは、グローバルなインターネットという概念は理想であり興味深いものの、ウェブを好き勝手に利用してきた中国に対して何の行動も起こさないのは浅はかな考えだ、というものだ。
中国に対しては、多くが同じ見方をしている。中国は、外国企業を自国のインターネットから締め出して国内の巨大市場へのアクセスを阻止しているのみならず、インターネットを政治的武器として使い、情報へのアクセスを制限し、自国民を監視し、他国の政治活動に介入している。
従って、インターネットは万人向けのネットワークであり、中国企業はグローバル市場へアクセスするために利用する権利がある、という主張は、現実から目を背けたものだ。オープンなインターネットのルールをあからさまに無視する中国に、世界中のインターネット市場へのアクセスを許すべきなのはなぜだろう?
ウーの主張はもっともなものと言えよう。中国は長年にわたり一方的なアプローチをとっており、それには正当性がない。中国政府は、独自のルールとあらゆるリソースを湯水のように使い、グローバルなインターネットという目標を阻害してきた。中国ほどの影響はないが、イラン、キューバ、ロシア、サウジアラビア、そして最近ではトルコやインドもこれに追従している。
中国政府が「グレート・ファイアウォール」を構築してから20年以上が経った今、中国企業を締め出し始める時が来ているのだろうか? これは複雑な問題であり、締め出しによりどのような効果があるかは私には何とも言えない。
ここ数十年間に渡る中国の戦略は、一方的であった一方で、成功を収めてきた。世界のバリューチェーンの半分は中国発だったり、何らかの形で中国を経由したりして、中国に依存している。世界で消費される製品の多くは中国で製造や組み立てが行われており、中国で設計される製品も増えている。こうしたグローバリゼーション水準を手放すことは、世界中、特に米国の企業にとって弊害になることは明らかだ。
さらに、そうした方向への移行は、ジョージ・オーウェルが『1984年』で予言したような世界の分断を促し、緊張激化につながることは必至だ。中国を国際貿易から締め出すためには、米国が世界で幅広いコンセンサスを得る必要がある。その際には中国側につく国もあれば、中立を維持する国もあるだろう。
ティム・ウーの主張は、ドナルド・トランプがそうした措置を提案するのに適した人物ではないかもしれず、ティック・トックやウィーチャットに対する一方的な措置が状況をこじらせているものの、それでも世界は目を覚まして中国の問題を直視すべきだ、というものだ。中国は、オープンなインターネットのルールを甚だしく踏みにじる旗振り役となっている。私たちがそうした中国の振る舞いに対して何か行動を起こすのか、それとも引き続き無視するという危険を冒すのかを考える必要がある。