美人なだけでは「トリガー」にならない
私ごとですが、8月6日に発売した、新刊『これからの生き方。』には、8人の登場人物が出てきます。
群像劇となってる本作では、中年を迎えた元天才経営者や、野心に溢れる新進気鋭のショコラティエ、最年少での出世を望む女性編集者と、出世を諦めた窓際副編集長などの、価値観の衝突の姿を描いています。
そこで描かれているものはまさに、「働く人の価値観」と「溝」そのものです。ドナルド・クーパー氏の有名な14の労働価値理論を使いながら、働く人同士の「価値観の溝」を描いています。
具体的に、14の価値観とは、以下の項目を指しています。
そもそも、人は「たったひとつの理由」だけで、物事を選ぶほど、シンプルではありません。たとえば、料理を食べる時、あるいは買い物をする時「安い」という理由だけで選ぶことは思うよりありません。何か欲しい理由が別にあって、それにおまけで「安い」から買うわけです。
言い換えれば、「この品質、このロケーション、このブランドで、この値段なら、買おうか」という風に複数の軸から、購買の可否を決めています。同様に働く場所、仕事も同じです。
実際には給与や待遇「だけ」で仕事を選ぶ人はほとんどおらず、その証拠にもし給与だけで選ぶなら、全ての働く人が「平均給与が最も高い外資系金融機関」を志望する、はずです。あるいは、別の例なら、遊び相手ではなく大事な結婚相手を「美人なだけ」では選ばない、ということです。
「何を当たり前なことを言ってるんだ」
そう思ったらすみません。ですが、重要なのは、では、実際に「働く人はどんな複数の軸を持って、職場を選んでいるのか?」を理解しているかということなのです。そこで、14の労働価値の出番です。
難しいのはチーム単位、職種単位でもバラバラということ
さて、そろそろこの記事は終わりにしたいと思いますが、さらにとても難しいのは、この労働価値というのは、「チームや職種」によってもバラバラだということ。そして、年齢によっても変化していく、ということです。
ではどうすればいいのか?
より詳しくは、新刊『これからの生き方。』をご覧いただければ幸いですが、一つは「チーム単位で価値観を理解しあうタイミングを定期的にもつこと」であり、もう一つは「そもそも経営者と現場はこんなにも求めているものが違うのか」というのを可視化してみることです。
特に現在は、コロナの影響を受けて、本当に多く働く人が「これからの生き方」や自分の仕事のあり方を見直しつつあります。ぜひ、この機会に価値観を見つめる具体的な手法を試してみてはいかがでしょうか。この話が皆さんにとって少しでも参考になれば幸いです。
北野唯我(きたの・ゆいが)◎実業家、作家。『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』など大ヒット著書多数。とくに前作『転職の思考法』20万部突破のベストセラーに。近著に『これからの生き方。自分はこのままでいいのか? と問い直すときに読む本』がある。