このような状況の中、より簡便な検査方法として「抗体検査」に注目が集まっている。抗体検査は体内にウイルスへの「抗体」ができているかを確認することで、過去に自分が感染していたかどうかを調べることができるものだ。しかしいま、この抗体検査の使用を巡って、検査に対する誤解や誤用が広まっているのではないかと、専門家が警鐘を鳴らしている。
参議院議員、そして慶應義塾大学医学部教授の医師である古川俊治に話を聞いた。古川は、新型コロナに関連する最新の医学論文から有用な情報をまとめたエビデンスリストを作成。このリストは、日本感染症学会のウェブサイトや、京都大学の山中伸弥教授が運営する新型コロナに関する情報発信サイトにも掲載されている。
新型コロナウイルス感染症に関する検査方法は、抗体検査、PCR検査、抗原検査の3種類があり、それぞれに適した使い道が示されている。その検査は感染拡大防止のために、本当に有効だろうか?
陰性でも感染している可能性が 抗体検査とは
抗体検査とは、ウイルスに感染した後にできる抗体の有無を調べる検査であり、過去に感染していたかどうかを明らかにすることができる。新型コロナウイルスは感染しても無症状、もしくは軽症にとどまる場合が多いと言われている。自分でも気づかぬうちに感染し、治癒していたのではないかという期待から抗体検査を受け、抗体があるから自由に行動できる、という免罪符を得たい人も多いようだ。
しかし問題なのは、新型コロナの場合、抗体を保持していても、再感染しないという証拠は明らかにされていないということだ。抗体を得ていたが、期間が経つとなくなってしまう懸念や、新型コロナの抗体がウイルスの感染を阻止する働きをしっかりもっているかどうかはまだ議論中だという。
また、仮に検査で陰性(抗体がない)と判明した場合も、それはまだ抗体が作られていないことを示すものであり、現在ウイルスに感染しているかどうかを判断するものではない。通常抗体は1〜2週間の期間を経て作られるものであるため、まだ抗体ができていないだけで、ウイルスに感染している状態であることも十分に考えられるということだ。抗体検査を非感染の証明として用いることも適切ではない。
抗体検査はイムノクロマト法と呼ばれる少量の採血から結果がわかる、簡易的な検査方法が現在では一般的だ。改善が進められているものの、実際は抗体をもっていないのにもっていると判定される「偽陽性」や、すでに新型コロナウイルス感染症にかかっていて抗体があるのに陰性となる「偽陰性」の判定が出る可能性があるなど、精度が高いものではないことが明言されており、診断を目的とした単独での使用は推奨されていない。また、抗体検査には医療保険は適用されない。
では抗体検査の有用性は、どのような状況において発揮されるのだろうか。