政府はこれまでの鼻咽腔ぬぐい液を用いた検査法と共に、より簡単な唾液によるPCR検査法を認めるほか、9月末にはビジネスを目的とした海外渡航希望者を対象にPCR検査の予約システムを導入する見通しなどを発表している。
抗原検査はPCRの補助的な位置付け
PCR検査が無症状者の感染の有無を調べられるのに対し、抗原検査は症状がある者が新型コロナに感染しているかどうかを確定するために使用される。新型コロナウイルスに特徴的なタンパク質が検出されると検査キットに反応が表れる。インフルエンザの迅速診断としても使われるキットを用い、30分ほどで結果がわかる簡単な検査方法だが、ウイルスの量が少ないと感染していても陰性となる可能性があり、感度の信憑性はPCR検査と比べて劣る。
定性抗原検査キットを活用した検査フロー 厚生労働省ホームページより
5月13日に日本で初の「新型コロナウイルス抗原検査キット」が承認されて以降、当初は抗原検査のみで陰性の確定判断することは認められていなかった。しかし現在では発症2日から9日以内の有症状者はPCR検査との一致率が高いことがわかり、発症2〜9日以内の有症状者については、抗原検査での陰性が診断された場合、従来のようにPCR検査を受けることなく、陰性であると確定診断を行うことが認められている。PCR検査と同様、抗原検査にも医療保険が適用される。
抗原検査が保険認可された背景には、30分ほどで診断でき、特別な資材やマンパワーを必要としないという検査の簡便性にある。厚生労働省はPCR検査に抗原検査を適切に組み合わせた検査体制を構築していきたい旨を発表している。
ありとあらゆる検査に100%はない
古川は、PCR検査と抗原検査について「どちらの検査にしろ、陽性と出ればすぐに自己隔離を行うこと」、そして「陰性と出た場合でも、それは感染していないことを示すものではない」ことを強調する。
「ありとあらゆる検査に100%はないと言うことを頭に入れてください。日本の場合は陰性と出たらすぐに仕事に行く人が多いですが、これは大きな間違いです。少しでも体が重い、平熱より高いなど、普段とは違った体の様子を感じたら出歩かないこと、これが一番ですね。それからもし新型コロナにかかったことがわかったら、周りの人や会った人たちみんなに知らせてください」
また周りで感染者が出た場合は、「発症から3日ほど前に会っていたら、濃厚接触者となる可能性があるので自己隔離をするべきでしょう。たとえ自分自身のPCR検査が陰性だとしても、偽陰性の懸念があるので自分は感染しているかもしれないという認識をもつことが重要です」と訴える。そしてこう補足する。
「いわゆる感染性、人にうつすレベルのウイルスを排出する期間はだいたい発症3日前ぐらいから発症後1週間くらいと考えられています。だいたい10日ちょっと経つと感染性がなくなるんです。ところがウイルスのRNA(遺伝情報が記録される高分子物質、リボ核酸)は体の中にずっと残りますから、中には発症日から60日経ってもPCR検査で陽性だった人もいるんですね。そういったことがあまり語られていないことも問題ですね」
それぞれの検査の適切な用途を理解せずに検査を受けるだけでは、さらなる感染拡大の一端となってしまう恐れもある。適切な情報を得た上で、適度な危機感をもちたい。