一般的には、抗体検査は地域や特定の範囲内でどれだけ感染が広がっているかを知るための疫学的用法で有用だという。抗体検査を基にし、地域別などで解析することにより、どこまで集団免疫が獲得されているかを把握するのだ。
これについて古川も、「はっきり言うと行政目的のスクリーニング検査においては意味がありますが、個人にとってメリットはほとんどないです。何%くらいの人が抗体をもっていて、だいたいどれくらいの人がウイルスにかかったんだなということを、行政があとになって知ることができるという使い方です。もしくは症状があったのにPCRで陰性だった人が、あとでやっぱり自分は感染してたんだなとわかる、というように現状を示すものではありません」と指摘する。
なぜ普及しないのか?PCR検査の実態
一方、PCR検査は、ウイルスの遺伝子を調べ、感染しているかを判定する検査だ。感度は少量のウイルスを増殖して検査にかけることができるため他の検査法と比べると高いが、それでも70%ほどと言われており、これは「3割の人は感染しているのに陽性と出ない」ということだ。
特に陰性判定が出た場合でも、注意する必要がある。また、ウイルスの増殖に時間を要するため検査には数時間かかる。信頼性は最も高いがコストやマンパワーの必要性、検体採取の煩雑さからなかなか普及が進んでいない。
検査数拡充のため、独自の体制を築くことを検討する自治体も。(Getty Images)
厚生労働省によると、8月2日時点では1日に最大約37405件の検査能力が確保されており、多い日には1日18000件ほどの検査が実施されているという。しかし検査実施数は諸外国に比べてかなり少ない状況であり、この理由について厚生労働省は保健所の業務過多やマンパワー、防護服など資材の不足を挙げている。
これまでは保健所への相談が検査を受けるための最初のステップとしてあったが、検査数の増加を目指し、保健所への相談を介さずに検査を受けられる「地域外来・検査センター(PCRセンター)」ルートの拡充を行なっている。なお、PCR検査には医療保険が適用される。
例えば感染者が多いとされる東京都新宿区では、8月3日から「新宿区新型コロナ検査センター」が設置され、新宿区医師会等の区内医療機関を受診し、医師より検査センターへの紹介を受けた区在住者や、区で就業、就学する者が検査を受けることができる。
また、7月30日には東京都と連携する東京都医師会がPCR検査を受けられる都内医療機関を1400カ所まで増やす方針を検討していることを発表した。このうち、世田谷区では独自に世田谷区医師会が検査体制拡充のため、1日あたり1000件の検査が可能になる検査機械の導入を検討していることを発表した。国の検査体制拡充への対策の遅さにしびれを切らした自治体が、独自の体制づくりを始めた例だが、加藤厚生労働大臣は、検査の拡充と共に病床や宿泊療養の施設を確保する必要性を示している。