ビジネス

2020.08.11 17:00

脅威の顔と名前を見せる。新聞配達の少年が「サイバー戦士」になるまで


フロリダ州タンパにあるオフィスで働き始めたカーツに与えられたのは、小学4年生のときに教室のパソコンで学んだコードの書き方を活かせる、まさにやりたかった仕事だった。

「当時、“侵入テスト”と呼ばれる仕事がありました。他人様のコンピュータを破壊して報酬をもらうというもので、最高の仕事だと思いましたよ」

つまり、プライス・ウォーターハウスの顧客たちは彼に、自分たちのコンピュータに侵入させ、システムの脆弱性を特定させていたのだ。

カーツは成果を上げ、同社史上5人目のサイバーセキュリティ専任の社員となった。そのままそれなりに楽しい数年間を過ごし、次いでアーンスト・アンド・ヤング(EY) に数年在籍した後、1999年には自身の最初の会社「ファウンドストーン」を立ち上げた。ネットワーク上のセキュリティの穴をふさぐソフトウェアとハードウェアをつくっていたこの会社は、マイクロソフトなどの大手顧客を引き寄せた。

そして創業から5年後、「マカフィー」に現金8600万ドルで売却された。

カーツはマカフィーでたちまち上層部に上り詰め、2009年にはエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)になった。そして翌年には、飛行機で隣の席になった男性がマカフィーを使ってたっぷり15分かけてノートパソコンをスキャンする様子を目にして、よりシンプルで高速なクラウド型テクノロジーの着想を得たという。

「その男性は客室乗務員と話したり、新聞を読んだりしていたのですが、スキャンソフトはその間ずっと稼働し続けていました。私は自分の席で『なんてことだ。これはひどい』と思っていました」

すでに頭の中には、明確な構想があった。「すべてをクラウドに移行させる」というものだ。マカフィーにこのアイデアを売り込んだが、同社は、この変革のために時間も資金も費やす気がなかった。カーツは11年に同社を辞め、即座に次の事業のための資金調達を始めた。
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文=エンジェル・オウヨン 写真=ティモシー・アーチボルド 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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