経済や医学、自然保護、環境分野の専門家がまとめた同調査は、過去100年で自然宿主から人間に伝染したウイルスは1年間に2つで、自然破壊が進んでいることを受けてそのリスクはますます高まっていると述べている。
将来の経済的投資は野生生物の保護に焦点を当てるべきで、現在の取り組みはひどい資金不足の状態だ。森林伐採や動物の国際取引により、人間と家畜が野生動物と接触する機会がさらに増え、病原体に感染する可能性が高まっている。熱帯雨林の境界部分は新型ヒトウイルスが特に出現しやすい地域で、元々の森林被覆の25%が失われると野生生物との接触の可能性が高まる。
同調査は「森林伐採とウイルスの出現の間の明確なつながりからは、手付かずの森林被覆を維持する大規模な取り組みを行うことで、そのメリットがたとえウイルスの出現の可能性を下げることだけだったとしても、大きな投資利益が得られることが示唆されている」と述べている。もちろん、こうした取り組みには、気候危機を悪化させている二酸化炭素の水準を一部削減することなど追加のメリットもある。
報告書の著者らは、ウイルスのより効果的な早期検知や抑制、中国での野生生物農場の廃止、家畜を通した病気の広がりの抑制など、森林伐採の抑制以外に投資のための推奨事項をいくつか挙げている。
中国の野生生物農場セクターでは現在1500万人ほどが雇用されており、その規模は200億ドル(約2兆1000億円)ほどで、これを段階的に廃止する議論が現在進んでいる。野生動物を農場で飼育すると病気が発生するリスクが生じる一方、野生生物農場に関した保健・安全上の規制はたいてい不十分であることが理由だ。
同報告書では、リスクが高い保有宿主の生物を国内外で取引することを禁止する法律が必要で、霊長類やコウモリ、センザンコウ、ジャコウネコ、齧歯(げっし)類の動物が市場で取引されないよう規制を導入すべきだと述べている。