台湾のシンクタンクの中華経済研究院(CIER)は7月22日、2300万人が暮らす台湾はパンデミックの恐怖を遠ざけ、経済を復興させていると発表した。CIERは2020年の台湾の経済成長率のベースラインを以前の予測の1.03%から1.33%に引き上げ、7月中旬から利用可能になる政府が発行する17億ドル(約1800億円)相当の割引クーポン券が、さらに経済を押し上げると予想した。
CIERによると、台湾は世界の多くの国がパンデミックへの対応に苦慮する中で、いち早く復興を遂げる見通しという。台湾での新型コロナウイルスの感染者は累計458人に留まっており、ロックダウンも実施していない。IMF(国際通貨基金)は今年の世界の経済成長率が4.9%のマイナスになると予測したが、アジア地域では比較的軽微なダメージに抑えられている。
台湾のGDP成長率は今年の第2四半期に落ち込んだが、今四半期は1.64%増を記録し、第4四半期には3.09%増が見込めるという。さらに、来年は2.33%増の成長率が見込めるという。
台湾の主計総処は2020年通年の実質GDP成長率を1.67%と予測している。
台湾政府は感染拡大の初期の段階から、モニタリングを徹底し、感染者や接触者らの厳格な追跡を行ってきた。海外からの渡航者には14日間の自宅検疫を義務づけ、ウイルスの侵入を防止した。現地ではロックダウン措置は実施されず、レストランや小売店は適切な配慮を行った上で、通常の営業が認められていた。
フランスの投資銀行ナティクシス(Natixis)のアジア太平洋部門のエコノミストは、「台湾は、他の諸国に比べて少ない制限で、感染拡大を抑え込むことに成功した」と述べた。
台湾のエイサー(Acer)やエイスース(Asustek Computer)などのテック企業は、各国のテレワーク需要の増大を追い風に、コンピュータなどの電子デバイスの売上を伸ばした。フォックスコンやペガトロンなどの中国に製造拠点を持つ企業らも、中国が3月にロックダウンを解除して以降に、工場を再稼働させている。
ムーディーズのアナリストは7月1日のレポートで、「台湾メーカーが輸出する高品質な電子デバイスの需要は、特に来年には力強く回復し、台湾の経済成長を後押しする」と述べた。
政府が発行するクーポンも、一般的な小売り商品だけでなく、海外からの旅行者が消えた中で、国内の旅行需要を高める見通しだ。台湾政府は旅行分野の経済刺激策だけで1億3000万ドルを注いでいる。さらに、1000台湾元(約3600円)を支払うと3000台湾元相当の買い物が可能になる割引クーポンで、消費を促進しようとしている。