テクノからチャート、その他の音楽業界に関する執筆を担当。

Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images

テイラー・スウィフトは7月23日、森の中で佇む自身のモノクロ写真をインスタグラムに投稿し、数千万人に及ぶフォロワーたちを驚かせた。その写真は彼女の最新アルバムの「folklore(フォークロア)」のカバー写真だった。

スウィフトが8枚目のフルアルバムを発表したわずか数時間後に、全ての楽曲はスポティファイなどで聴取可能になった。今回の動きは、スウィフトが以前と変わらぬ情熱を音楽に注ぎつつ、時代にふさわしい進化を遂げたことを示している。

2006年にメジャーデビューを果たしたスウィフトは、巨額の予算を投じたミュージックビデオやラジオでの集中的なプロモーション、スタジアムツアーなどを含む大規模なキャンペーンの繰り返しで現在のポジションを築きあげた。デビューから10数年が過ぎた今、彼女はアルバムを出す度に、最低1年間は売れるシングルを出し続けられる音楽業界にとって理想的なアーティストに成長した。

しかし、音楽が消費されるスピードは近年、劇的に速くなりつつある。以前と変わらぬスタイルでは、過去と同様な成功は再現できなくなっているのだ。

今回のアルバム「folklore」は前作の「Lover」から1年足らずで発売されたが、これは彼女のキャリアの中で異例のスピードと言える。彼女が過去にリリースしたアルバムは、多くの場合、2年以上の間隔を置いてリリースされていた。

「Lover」は好調なセールスを記録したものの、個々のシングルの売上は以前の作品には及ばなかった。これは、単純に楽曲の魅力の問題かもしれないが、人々の音楽の消費スピードが以前よりも速くなっていることの現れかもしれない。

近年はヒップホップがチャートの主要なポジションを占めており、米国では最も人気のジャンルとなっている。背景には成功したラッパーたちの多くが、1年間に複数のフルアルバムをリリースし、短い場合は数日の間隔でシングルを投入していることがあげられる。

スウィフトが同様のスタイルで、この動きに対抗することは難しいが、彼女は彼女なりのスタイルで、新しい時代に適応しようとしている。

気になるプロモーション展開


彼女は新アルバムの製作を誰にも気付かれないように進め、理想的なサウンドやスタイルを完成させるとすぐにそれを公開し、ストリーミングで聴取可能にした。新作の「Folklore」は既に記録的なストリーミング再生回数を記録しており、来週のチャートでトップに立つことは間違いない。ここからリリースされるシングルもHot 100入りは確実と言えるだろう。

「Folklore」が大ヒットとなることは確実だが、気になるのは今後、どのようなプロモーション展開が用意されているかだ。スウィフトは以前と変わらぬオーガニックなスタイルで新曲をライブで披露するのだろうか。それとも、世界がパンデミックに襲われた今、これまでにない画期的なキャンペーンが用意されているのだろうか。

いずれにしろ、彼女がこれまで以上の情熱を注いだ新作アルバムを完成させ、公開したことは非常に喜ばしい。スウィフトはインスタグラムの投稿で、「心から愛するものを完成させたら、それをすぐ世界に届けるべきだと思った」と述べた。これは彼女の正直な声であると同時に、極めて正しい戦略とも言える。

編集=上田裕資

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