その背景にあるのは、石井のこれまでの経歴と現在の取り組みからくる問題意識だ。日本生まれ、米国育ちの石井は、米国ヴァッサー大学卒業後、東京医科歯科大学に学士編入し、MD-PhDプログラムに進学し、現在、Global Health Promotion分野MD-PhD2年。
2018年には米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学し、グローバルヘルスの実現に向け、臨床データの活用方法を学ぶ。留学中に、臨床データを用いた機械学習の素養について学ぶとともに、受動的に心電図を取得するシステムを、ムハンマド・ガセミMIT客員教授と発明し、米国・日本で特許を申請している。
「心電図センサーを机やパソコン周辺機器に埋め込んでいるため、机に座るだけで測定してデータを取得できる。世界最大の死因でもある心疾患の早期発見により、効果的な処置・治療が受けられるシステムに貢献したい」(石井)
受動的に取得したデータとともにモニタリングすることで、医療安全における新しいベンチマークの発見と構築、再受診・再入院率を下げることを目指している。大量生産の実現で、医療機関にある心電図の100分の1程度の価格で、心臓をモニタリングできる仕組みができるという。
石井は、「GLOBAL HEALTH INNOVATION LAB」を通して、このようなプロジェクトがさらに増えることを目指し、グローバルヘルスイノベーターとして走り続ける。
「米・ブッシュ政権、オバマ政権で、政府の医療IT政策の立案、実行を主導してきたメンターのジョン・ハラムカ先生は、『革新的なデジタルヘルスイノベーションを育み実装する環境として日本は最適である』と言います。だからこそ、グローバルヘルス分野で、日本からのクリエーティブ・イノベーションを促進するための活動を進めていければと思っています」(石井)
コロナ禍で行った、ニダ・アリとの対談で、石井は改めてグローバルヘルスの重要さを実感したという。それはポリオの専門家であるニダの言葉にあるという。
「ウイルスは非常に賢く、突然変異し、適応し、相を変え、旅をして、休眠し、再び現れる。だからこそ、戦うためには協力し合う必要がある。誰も一人では戦えません。私たちは協力なパートナーシップを必要としていますね」
石井も登壇する7月24日「Hack the World」の開会式は、こちら。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を務めるMIYAVIをメインパーソナリティに招き、自らの意思で世界を書き換えようと行動する「Vision Hacker」たちとトークセッションを行う。