NASAは、地球から150万kmの距離に送り込まれる「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の打ち上げを、2021年3月に予定していたが、7カ月先送りされることになった。1990年から稼働中のハッブル宇宙望遠鏡の後継機で、かつてないほど遠くの宇宙を見渡せるウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げは、過去数回に渡り延期されてきた。
しかし、今回の延期についてNASAは絶好の言い訳を見つけている。新型コロナウイルスのパンデミックだ。
「ウェッブ宇宙望遠鏡は世界で最も複雑な観測プロジェクトであり、NASAが最も重視しているプロジェクトの1つだ。パンデミックの最中に我々は全力をあげて取り組んできた」と、NASAの担当者のThomas Zurbuchenは7月16日に述べた。
「我々は今後もマイルストーンの達成を目指し、来年の打ち上げ日までに技術的課題を克服する」
ウェッブ宇宙望遠鏡は、試験をクリアした後に来年の早い段階で南米のギアナ宇宙センターへと運ばれ、2021年10月に欧州宇宙機関(ESA)のアリアン5ロケットで打ち上げられる予定だ。
1990年にスペースシャトル・ディスカバリー号によって打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、地球から約547km上空の軌道上を周回しているが、ウェッブ宇宙望遠鏡は150万kmというはるか彼方の軌道に投入される。
ウェッブ宇宙望遠鏡は目的地に到着するとテニスコートほどの面積の遮光シールドを広げ、直径約6.5mの反射鏡によって銀河や宇宙の彼方から届く、微細な光を捉えることになる。この望遠鏡は太陽系の成り立ちを観察し、宇宙の起源の謎を探っていく。
ウェッブ宇宙望遠鏡は現在、カリフォルニア州レドンドビーチのノースロップ・グラマンのラボにおいてテストを重ねているが、現地では新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、人員が削減されるなどの課題も生じている。
NASAによると、ウェッブ宇宙望遠鏡のプロジェクトの開発コストは、以前に定めた予算の88億ドル(約9400億円)に収まるという「現在の開発スケジュールを遵守できれば、残りのタスクは新たな予算編成行わずに遂行できる」とNASAでプロジェクトを統括するGregory Robinsonは述べた。
「最終チェックに向けた準備作業を夏以降に完了させ、打ち上げの準備を進めていく」とRobinsonは続けた。宇宙の始まりの謎を解き明かすウェッブ宇宙望遠鏡に、大いに期待したい。