──新ファンドの特徴は。
大きく2つある。1つは、ファンド規模と出資者の変化だ。1号〜4号ファンドは、事業会社を中心に組成してきた。今回は、過去最大規模の250億円で、既存出資者からの継続出資のほか、大半を年金基金・金融機関・政府系機関をはじめとした機関投資家が占める。また、海外機関投資家受け入れ目的の、ケイマン諸島籍ファンドも並行組成する。機関投資家によるVCアセットクラスへの運用資金流入という、欧米型へ動きの一例といえるだろう。
日本におけるスタートアップの資金調達額は増加傾向が続いたが、年間4000億円超(編集部注:INITIAL調査、2019年4462億円。18年4387億円)。米国と比較すると、40分の1程度と少ない。機関投資家からの資金供給が3分の2を占める米国のようになると、日本のスタートアップ・エコシステムはより拡大する。
これまで日本のVCは、機関投資家からアセットクラスとして選択肢に入りづらい状況にあった。その背景の一つに、機関投資家向けのパフォーマンス指標(ベンチマーク)がなかったことがある。例えば、機関投資家向けのコンサルティング会社であるケンブリッジ・アソシエイツのデータに日本のVCアセットクラスはカバーされておらず、ファンドパフォーマンスの相対比較を行うすべがなかった。
そこで、私も運営に関わっている日本ベンチャーキャピタル協会では20年6月、「国内VCパフォーマンスベンチマーク」を新たに作成。オルタナティブ投資の国際的なデータ提供を行っているプレキン社と共同で行い、国内初のベンチマークを発表した。指標が継続的に運用され活用が進むことで、今後、機関投資家からの資金を伴うファンド組成は増えるのではないか。
──もう1つは?
「投資ステージの拡張」だ。創業期からプレIPO期までの一気通貫型となった。これまで同様、創業者と共にゼロから戦略、プロダクト、チーム組成を行う「創業期」からの支援は変わらないが、プレIPO期まで継続的に追加投資できる点が従来とは異なる。本ファンドでは、40社への投資を想定し、1社あたり平均5億円、最大30億円までの投資が可能になる。
日本スタートアップ市場において、「グロース期」の資金供給が少ないという課題があった。私たちで同ステージの追加投資もできるようになることで、より大胆な投資ができる。例えるなら、富士山の登頂から今後はエベレストの登頂へと目指す対象が変わるようなイメージだ。