日本の少子化に拍車をかけるコロナ禍の「厳しい現実」

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「何かあっても、誰も助けてくれない」──小さな子を持つある母親から聞かれた言葉です。誰もが大変なコロナ禍ですが、とりわけ子育てする親にとって、不安と苦労が重なっています。

少子化が止まらない日本で、コロナ禍はこれを深刻化させ、マグマのように溜まった問題を噴出させました。すでに新聞各社の社説や経済アナリストにより、コロナ禍で少子化問題への対処がおろそかになることへの懸念が伝えられていますが、実際、政府による様々な施策は、これから子どもを持とうという人々の心に、励ましよりも不安や懸念を倍加させているようです。

疑問の休校、厳しい育児


2月27日、安倍晋三首相は、全国の小中学校と高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを発表しました。4月7日の緊急事態宣言では保育園なども休園となり、筆者が利用するベビーシッターのサービスもストップしました。

これには、感染拡大対策としての最初の大きな施策が、被害を受けにくい子どもに対してであっていいのかという疑問や、学校や地方自治体との連携の乏しさを指摘する声、そして何より、「どうすればいいの!」という親たちからの悲鳴が多く聞こえてきました。

1歳児を持つ筆者も、妻とのチームワークでなんとか乗り切るしかありませんでした。小さな子を持つ共働き家庭では、子どもが眠ってから仕事をする母親が多く、二人の子が通う保育園が休みとなったある起業家の女性は、睡眠不足と疲労で「本当にキツくてどうなることかと思った」と振り返ります。



「コロナ危機下の育児と仕事の両立を考える保護者有志の会」が5月4日から10日まで実施したアンケート*の結果は、これが例外ではないことを示しています。首都圏の未就学児を持つ保護者(うち79%が共働き世帯)を対象に、保育園/幼稚園休園による育児や生活、仕事への影響をたずねると、以下のような結果となっています(インターネット調査、回答1634件)。

・65%が自宅で仕事を中断しながら保育をしている

・ 両立の困難さから、約半分の保護者が、(情緒不安定など)子供の体調に変化があった

・業務の達成具合はいつもの半分以下との回答が過半を占め、多くの保護者は日中の業務未達を補うため夜間の作業等を行っており、心身ともに疲弊したり、勤務先からの評価が低下したり失業したりするリスクを感じている

・感染予防のため祖父母など家族の支援が受けられない状態であるが、ベビーシッターの使用率は4%以下と低い

こうした結果からも、施策と現場の解離が見て取れます。ならば、それを補うサポートや不安を和らげるコミュニケーションがあれば良いですが、納得がいかない人々のケアが足りていないのが現状です。

休校や休園にあたり、各企業に対して、育児に必要な休暇取得などの環境整備に協力するよう呼びかけもありましたが、そもそも男性の育休取得は6%という日本の職場環境で、それがどれほど響いたのかは疑問が残ります。
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文=本荘修二

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