自宅リビングから53連夜。小曽根真ライブ、集客は「1晩でホール8個分」

撮影:小田駿一


“53日間連続本番”のダメージ、後半は「手」に


「たしかに、身体はちょっときつかったですし、とくに後半、手にはきていました。もうちょっと続いていたら腱鞘炎になっていたかもしれない。

クラシックのコンチェルトのような、まるでアクロバットのような演奏を短時間でガーっと弾くと、『すごいことをやった』という実感とその達成感があるのですが、ああやって即興で弾いていると、普通にしゃべっているのと同じような感覚で。飲み屋さんで知らないうちに大声になっていて、本人はそんなにしゃべったつもりがないのに、翌日、なぜか声が枯れていて、『あれ、昨日はそんなにしゃべったっけ?』というのと同じような感じでした」(小曽根氏)

たしかに53日間、毎日「本番」が続くというのはプロのミュージシャンでもなかなかないことだろう。それだけでもすごいのに、自分たちの音楽を必要とする人がひとりでもいる限り、期間を設けずずっと発信し続ける心づもりだったという。

今回、自分たちが生かされている意味を教えてもらった気がする、と三鈴氏は言う。表現者として生きていく意味も。芸術をライフラインとして必要不可欠だという人々に届けることができた。

「リビングルームコンサートは私たちのひとつの“挑戦”であり、メッセージであったことも事実です」と三鈴氏は言う。

この「本気の思い」は距離に関係なく世界中に伝播し、いつの間にか人を集め、魅了する。「Welcome to Our Living Room」はそんなことも教えてくれた。

そして、その本気、リアルでも感じ取りたいという思いが募る。小曽根は12月に、「Welcome to Our Living Room」最終日の会場となった渋谷・オーチャードホールでコンサートを行なう予定だ。「遠隔での53夜」を経て肥えた耳、そして何よりも「リアルが当たり前でない」ことに気づいた今。劇場でのライブはまったく別の体験になる予感がする。

(参考サイト:小曽根真 公式神野三鈴 公式

文=柴田恵理 撮影=小田駿一 編集=石井節子

ForbesBrandVoice

人気記事