「ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)」は2014年の記事で、「雇用者側は、ただ泣き言を言っているだけではない」と述べた。製造業研究所(The Manufacturing Institute)は2018年、「労働力危機が悪化するおそれ」に警鐘を鳴らした。「インダストリーウィーク(IndustryWeek)」によれば、2019年秋の時点で、各社は「拡大する労働力不足」に直面していた。
基本的な経済理論に従うなら、危機的な労働力不足は、対策がなされる方向へと市場を動かす。教育・研修の充実はもちろん、企業は人材確保のため、条件に見合う労働者への賃金を引き上げるはずだ。
ところが、現実にはこうしたブルーカラー復権の機運が高まっているようには見えない。それは、自動化やアウトソーシングが、安価な代替手段として存在するからかもしれない。あるいは、経営者があまりに低賃金に慣れきってしまい、ほかの道を考えられなくなっているからかもしれない。
テスラモーターズ(Tesla Motors)を例にとろう。同社が、工場の設置面積を拡大しようとしていることに不思議はない。生産能力が売上高の伸びを阻害していて、スケールアップの必要に迫られているからだ。
もしテスラが十分な数のクルマを用意できれば、同社は一貫して収益をあげる企業になり、ファンたちが正しかったと証明できるかもしれない。実際、過去2回の四半期報告では、同社は純利益に転じている。
けれども、企業が適切な労働者を求めることと、労働者に適切な賃金を支払うことのあいだには、常にギャップが存在する。
テスラ専門のニュースサイト「テスララティ(Teslarati)」によれば、テスラは、サイバートラックを主力製品とする新工場をテキサス州オースティンに建設することを提案している。同市周辺はすぐれた技術的才能をもつ人材を見つけるにはよい場所だ。オースティンがあるトラヴィス郡では、6月23日の議題のひとつとして、テスラの工場建設案が議論された。
しかし提案内容を見てみると、テスラが予定する雇用の65%は未熟練労働者であることがわかる。一方で、5000人の「中度熟練者」を雇用し、平均年収は4万7147ドル(約506万円)との記述もある。これが意味することを、以下の3つの視点から考えてみよう。