懸念される球児たちのメンタルと進路をケアするには
とはいえ実際問題として今年の夏の大会・甲子園大会が中止となってしまった今、出場予定校に対する配慮を考える必要がある。
Getty Images
高校3年生は最後の晴れ舞台なだけに、悔しい思いしかないだろう。甲子園出場や優勝を目指していた選手達はなおさらである。
救済策はあるはずなので、それらを積極的に実施し、この世代で悔しい思いをした球児達に甲子園で思う存分プレーをしてほしい。例えば、県大会から甲子園大会という長期の開催は難しくても、自粛ムードが落ち着きそうな8月から県大会のみ開催といった施策を行なっていく価値はあるだろう。
例えば、近年の大阪府大会は非常にハイレベルなことで知られる。2017年のセンバツ大会決勝は大阪桐蔭対履正社のカードであり、2018年には大阪桐蔭が春夏連覇。昨夏は履正社が制覇した。彼らの戦い振りを見ると、府大会ですでに甲子園大会の上位レベルに達していることがわかる。そのことからも、開催する価値は非常に高いだろう。
また(原因は夏の大会・甲子園大会の中止に限ったことではないが)、ドラフト候補選手を含めた進路にも大きな影響が予測される。
これまでは、甲子園という目標に挑むこと、またその大会に出場することによって選手のポテンシャルが最大限に引き出され、結果的にスカウト陣の目に止まった選手が多くいる。このままでは、そうした「可能性」を見逃すことになってしまう。
対策として、契約前の練習参加を一般化していくことも一つの手段だ。具体的には、大学生の就職活動中でよく行われる「インターンシップ」のようなものだ。この機会に選手の能力やポテンシャルを吟味していくことによって、選手とスカウトの両者が納得いくドラフトを行う補助となるだろう。
このような状況だからこそ、「アマチュア」と「プロ」を分けている「常識」や「規律」となっている部分を解消していき、両者の協力で乗り越えていくことが重要だと考える。
繰り返すと、新型コロナウイルスの影響で残念ながら今年の大会は中止という結果になったが 、現在はスポーツの大会や各種イベントを「開催する」ことが非常に大事だと思う。
特に学生の大会では、選手たちに対して不必要な現実を与えないことや代わりとなる大会を用意することによって、僅かながらでも夢を与えていくことが大切なのは間違いない。そのためにも、新たな施策や案を「試すこと」に踏み出すことは大きな意味を持つ。必要なのは実行する「一歩目の勇気」である。