尾原:あのお芝居のすごいところは、物語や演者とともに、観客も一体になって現在進行系の未来を考え、一緒に冒険するというリアリティがあったところです。リアルには会えていないはずの演者と観客の距離が、かえって密接にシンクロしていくのを感じたんです。これはオンラインの力を活用した、新しい形でのエンタメだと思っています。
広屋:私たちも、コロナ禍でもなんとかめげずに動いてきた中での想いが作品に詰まっているので、これだけの反響をいただけたのかなと。反響の大きさには非常に驚きながらも、希望が見えました。
劇中に「未来は、私たち一人一人の行動の集積によって決定される」というセリフがあるのですが、それはまさに私たちが強く実感していることです。一人ひとりが諦めずに行動し、自分たちの手足で未来を切り開くことが大事だと感じています。
尾原:次のステップをどう考えていますか?
広屋:この夏、劇団ノーミーツ第2回公演『むこうのくに』を、フルリモート演劇で上演することを発表しました。「劇団ノーミーツ」のこれからとしては、緊急事態宣言が解除されたからといってすぐにリアルに戻るのではなく、例えばオンラインとリアルを組み合わせた、新しい演劇について考えていきたいです。
やはりオンラインで5000人の方に観劇してもらえたのは、演劇的にもいろいろな可能性を見出す機会になりました。オンラインなら会場もいらないし、キャパシティの問題もない。再演もすぐにできる。リアルでは難しかったことが実現できたからこそ、私たちはオンラインのライブエンタメを開拓するカンパニーになりたいと思っています。
例えば夏の上演は、どこかの劇場から配信されるシーンや、役者が街中に出て中継するシーンがあってもいい。アイデアを組み合わせながら、オンラインでできるライブエンタメの可能性の幅を広げていきたいです。
尾原:あえてニューノーマルにこだわりすぎず、日常が戻ってきたらリアルとオンラインを混ぜた“ハイブリット・ノーマル”に舵を切って、演劇の新しい形をつくっていきたいということですね。ますます楽しみです!
広屋佑規◎劇団ノーミーツ 主宰/企画・プロデュース。没入型ライブエンタメカンパニーOut Of Theater代表。ストリートを歩きながらミュージカルの世界を体験できる「STREET THE MUSICAL」、東京喰種の世界に没入できるイマーシブレストラン「喰種レストラン」など、公共 / 都市空間を活用したイマーシブ体験のプロデュースしていたがコロナにより全企画中止に。フルリモート劇団「劇団ノーミーツ」を旗揚げ。Zoom演劇作品のSNS総再生回数は3000万回、旗揚げ公演「門外不出モラトリアム」は動員5000名を記録。
「むこうのくに」はメインキャストを募集中。オーディション応募は6月16日 23:59まで(詳細は下記劇団公式HPにて)