ビジネス

2020.06.17

アマゾンが「レジなし技術」外販開始。その驚くべき狙いは?

ジャスト・ウォーク・アウト技術を使用したAmazon初の大型小売店/Getty Images


2019年のオンライン収益比率は50% 2017年の61%から激減


LVMHやVFコーポレーション、アマゾンなど、現代の消費者の期待を上回るスピードで商品を配送できる企業は、多角経営を通じて収益も純利益も着実に向上させている。アマゾンの収益源は、オンラインストア、実店舗、出品者の販売サポート、定額制サービス、AWSである。2019年、アマゾンは米国のインターネット商取引における全収益の38.7%を稼ぎ出した。しかし、AWSと出品者の販売サポートのビジネスモデルは変化しつつある。

2019年の年次報告書によれば、オンラインビジネスはアマゾンの収益の50%で、2017年の61%から低下している。AWSの収益は2017年の10%から2019年同期には12%に増加した。しかもAWSはアマゾンで最も利益を上げている事業であり、売上げの12%にあたる純利益の63%以上を稼ぎ出している。年次報告書には、AWSの純利益の伸びはユーザー数の増加とコスト構造の見直しによるものと書かれている。

オンラインストアが他の事業の収益を導き出す


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アマゾン広告収益のグラフ/WWW.EMARKETER.COM

AWSが高い利益を生み出す一方で、オンラインストアは他の事業が収益を上げるための手段となっている。「アマゾンのオンラインストアの売上げが他の事業の収益を生み出しています。たとえば広告はアマゾンにとってきわめて収益性の高い事業であり、デジタルでの売上げが伸びれば広告収入も伸びるのです」とリプスマン氏は言う。アマゾンの広告収入は2017年の33億ドルから、2020年にはそのほぼ4倍にあたる131億ドルになると予測されている。

データは誰のものか?


アマゾンはジャスト・ウォーク・アウト技術を通じてデータを収集しており、この技術を販売する際には買い手に顧客情報を要求するため、他社がジャスト・ウォーク・アウト技術を使用する場合、データは誰が所有するのか(誰とシェアするのか)という問題を解決する必要がある。

リプスマン氏はこう述べる。「アマゾン・ゴーのジャスト・ウォーク・アウト技術は、オンラインの売上げはわずか3%という市場の消費者行動に関する膨大なデータをアマゾンに提供することになります。アマゾンは食料品/コンビニエンスストア業界に関する知見を得ることで、この分野でも重要な役割を担うようになるでしょう。アマゾンとデータをシェアすることを望まない企業は、迅速なレジシステムに特化した技術系の小さな会社がいくつかあるので、それらが良い選択肢になるかもしれません」

今後数年間に、この業界ではデータの所有権に関して、現在開発中の業務を含めて多くの規制が施行される可能性がある。アマゾンはこの件については態度を明らかにしていない。

ジャスト・ウォーク・アウト技術は、コンビエンスストアや食料品店での買い物客の動線を変え、こうした技術に不慣れな客の行動変容までも引き起こすだろう。この技術の便利さを知った買い物客は、他業種の店でも使いたいと思い始めるにちがいない。

翻訳・編集=川崎稔/S.K.Y.パブリッシング

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