やるな、と言わせる英文ビジネスメールのキモは「冠詞」にあり

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海外ビジネスパートナーが非ネイティブのビジネスメールに「おっ」と思うポイント。それは実は「冠詞」だという。

試みに、アマゾンの書籍カテゴリーで「冠詞」と検索してみよう。検索結果、すなわちこれまでに出版された書籍でタイトルに「冠詞」を含む、現在入手可能なものは、227冊。そして、驚くべきことに、その多くが「売れ行き好調」書だ。

このことも証明するように、英語の文法の中でも「冠詞」は、日本人、とくに日本人ビジネスパーソンにとっては鬼門中の鬼門だ。なにせ「a, an」と「the」の違いのみならず、「無冠詞」というナゾのケースまであるのだ。

英国で暮らして10年の言語認知コンサルタント、オールライトちえみ氏は自らのブログで、「英語の文法ルールは、絵が描きやすいようにできている」という目からうろこの前提を示している。氏から全面許諾を得たため以下、転載で紹介する。


日本語は、「最後まで聞いてから」でないと絵を描き始められない


「英語は冠詞が必要です」「冠詞を忘れないように」と何回言われても私達は忘れます。

そこでまずは、なぜ英語は冠詞が必要なのかを考えると見方も少し変わってくると思います。

ここでは、「英語は右脳経由で言語処理をするため、イメージ(絵)を描きながらことばを処理している」ことを大前提としたいと思います。

よって、英語という言語は、「絵が描きやすいような文法ルール」でできているといえると思います。

(※この理論は私自身が立てた仮説で、英語圏で、ことばと絵(イメージ)を結びつける遊びやゲームが非常に多いことに着目して検証をはじめたものですが、言語脳科学的には、角田忠信医師の実験結果を参考にしています)

日本語は左脳優位で言語処理を行うため、ことばを絵にする必要がなく、冠詞や単数複数も情報として必要がありませんし、その他の文法ルールも英語とは大きく異なります。

英語は、

I →slept→on→ the sofa→ with →my cat. 

のように、耳に入った単語順にどんどん絵を描写し付け足しながら進むことができますが、日本語は、

私は→猫と一緒に→ソファーに→寝た

のように、最後まで文を聞いてからでないと絵を描き始めることができません。

もし、「私は猫と一緒に」のあたりから適当に予測して、猫と一緒にご飯を食べている様子を描いてしまったら、最後の「寝た」で、最初に描いた絵を消して描き直さなければなりません。

長い文章だと主語と動詞が離れすぎるので、「ん? 誰がそれやったんだっけ?」というように情報が曖昧になることが多々あります。これも私が愛してやまない英語と日本語の大きな相違点です。

“My friend gave me chocolate.”では絵が描けない


話を「冠詞」に戻します。

例えば、

「(バレンタインデーに)友達がチョコレートをくれた」

これを日本語のメガネをかけたまま英語にすると、

My friend gave me chocolate.

としたくなりますが、この文章だけを頼りに、絵に描くとしたら──? 
1.友達は何人描いたらよいのか、2.チョコレートは箱に入っているのか、それともバラバラの何粒かなのか、と情報が足りません。

ですから英語では、以下のいずれかのように言う必要があります。

One of my friends gave me a box of chocolate.

Two of my friends gave me a bar of chocolate.

Some of my friends gave me a piece of chocolate.
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文=オールライトちえみ 構成=石井節子

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