発端は、1つの動画だった。逮捕の一部始終を収めた動画が、事件の数日後にSNS上にアップロードされ、驚くべき速さで拡散された。
「助けてくれ、息ができない」
動画では、白人の警察官がフロイドを押さえつけるところから、「息ができない」と繰り返す被害者の言葉を無視し、平然とした顔で8分間以上頸部に膝を乗せ、声を出さなくなるまでの様子が収められている。
この動画は世界の人々を震撼させ、アメリカ以外でも各地で抗議デモが広がっている。一部で暴徒化し、武装していない市民に対して警察による発砲や催涙ガスなどによる対応は、さらなる波紋を呼んでいる。
こうした動きに対し、多くの著名人が声を上げている。アメリカで活躍するコメディアン、トレバー・ノアもその1人だ。ノアが自身の番組「The Daily Show」のインスタグラムアカウントに載せた動画は、2日で1000万回の再生回数を突破した。
なぜこれほど大きな動きが起きたのか。そして抗議デモが「暴動」となってしまう社会構造について、彼の考察になぜこれほど多くの人が共感したのか──。トレバー・ノアが動画の中で語った言葉から読み解きたい。
米人気風刺番組 "The Daily Show" ホストのトレバー・ノア / Getty Images
コロナパンデミックが背景に
ノアは、今回の一連の流れは「ドミノのように起こった」という。
「一見一つ一つの出来事が、全く関係ないように見えますが、今世界で起きている色んなことは実は繋がっています。今回のことの背景はコロナパンデミックにあります。人々がこんなに家にいないといけないことは今までなかったし、これほど多くの人々が仕事を失って、ただ生活するためのお金を払うだけで精一杯になったことはありません」
新型コロナウイルスの感染者が多く出たアメリカでは、社会封鎖されている状況下で、「人々が世界で起きていることに目を向け始めた」とノアは語る。事実、3月中旬から米国で申請された、失業保険件数は4000万件にのぼる。