この言葉によりアップルが社会に対してどのような存在であるかを明確に打ち立て、そこに紐づく形でターゲットの分かれる商品プロダクトも設計されている。この他にも、開封する時のワクワクを演出するような商品パッケージや店舗の内装に至るまで「誰とどういう関係性を築くか?」が細かく設計されているという点で、PRのお手本として非常に分かりやすい。
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次に、上記のように大元の思想とそこからつくりたい関係性を定義した上で、広報を考えていく。
広報に関しては「コミュニケーションの接点数 × 量 × 深さ」の総和であると捉えると分かりやすい。接点数はSNS発信や店舗での接客などのコミュニケーション接点、量に関しては発信量である。深さがやや分かりづらいかもしれないが、これは「その企業らしさが伝わる広報方法」である。
アップルでいえば、「新商品プレゼンカンファレンス」だろう。ジョブズが作り出したあの独特のプレゼンスタイルすらもがイノベーティブで、アップルだからこその広報素材となっている。ブランディングはこうした「ブランドに紐付いたPRと広報」が戦略から戦術まで一貫させることを表しているため、アップルのブランディングは成功していると言える。
前回の記事でもCIが大元であるという話題にもなったように、まずは「どんな思想を社会に発信したいのか?」という企業の意志や哲学を言葉にしていくことが、これらの一連の流れのスタートとなる。
言葉の意味を、自分の哲学と言葉で話せるかどうか
マーケティングやブランディングのように、抽象的で違いが分かりづらい言葉はHR界隈以外でも多数存在する。こうした定義の大きい言葉はしっかりと概念理解をしておかないと、ベンダーサイドに振り回されてしまうことに繋がってしまうため、採用担当・広報担当者は腑に落ちるまで理解を深めることが重要だ。
そして世間一般的な定義を知りつつも、どの言葉も自分の頭で改めて意味を捉え、人に説明できるようにすることが最も大切だと個人的には思っている。
というのも、自社だからこその戦略は「自社で定義された言葉」の上で生まれるものだからだ。
例えば、ブランディング屋の自分としてはブランドという企業の思想・価値観を一番上流の概念として捉えているが、ハーバード大学のカリキュラムではマーケティングの中にブランディングがあるとされている。もちろん、それぞれロジックは通っているので、どちらが正解でも不正解でもない。
物騒な言葉だが有名な言葉に「殺るか殺られるか」があるが、己の哲学を持った言葉は市場で勝利するためにも必要で、はたまた市場に自社が振り回されないためにも必要だ。ここには「採用担当だから」「広報担当だから」という言い訳は関係なく、一ビジネスマンとして“自社らしく勝つ”ことは意識していきたい。
「自社にとっての広報・ PR・ブランディングが何なのか?」を突き詰めて考えいく中で自社なりの解釈を見つけ、それをうまく活用していく中で、自社だからこその施策と結果が生まれていくと信じて止まない。
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