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ブロックチェーンをインフラに組み込む、アートの価値が「露わになる」
上田:読者に、簡単な今のメインの思想を教えていただけますか?
施井:はい。今のテクノロジーの時代に対応できるインフラを作る、というのが究極の思想です。アートの世界は二次流通の仕組みが整っていなかったので、それをブロックチェーンで整えよう、というわけです。
アートのインフラは究極のアナログ世界で、実はものすごく脆弱です。地上にある美術品の50%が贋作だとか、有名な美術館の収蔵作品の4割が贋作だとかいわれています。証明書すら偽物の可能性があります。こんなにインフラが整っていないのに、売買は200億円規模でされることもある。あと、インフラを整えればごく一部の玄人だけじゃなくみんなが価値付けできて、関われるのではないかと。
上田:スタートバーンの仕組みを使うと、従来の、「アナログで贋作がいっぱいあるかもしれない、証明書も贋作かもしれない」といった状況がどう変わっていくのでしょう。
施井:一番はインフラがあるので信頼ができる。ビットコインに「トラストレス」という言葉がありますが、ずっと顔見知りの、お金持ちの、代々おじいさんから知っているコレクターにしか売れない、といったアナログな「信頼」がなくてもいいようにする。逆に言うと「作品の価値が露わになる」ということだと思います。もちろん、それが公開されるのは原則取引を希望する一部の人に対してのみですが。
上田:アナログだった世界をデジタルで管理していくということが、信頼性を高めると。
施井:あとは、デジタルのアートに所有権や版権といった権利をひもづける、二次的な効果があると思います。
上田:施井さん、逆に、贋作や偽物が存在することでかもしだされる「雰囲気」がアートの価値を釣り上げている可能性もありますよね。そこをハッキリさせてしまうことで市場が「萎む」可能性はないでしょうか?
施井:贋作やグレーな取引について、やはりそういった指摘をする人がいます。でも、とある昔、グレーな取引が行われていた商材があって、いざクリアになったらマーケットが100倍になったという話を聞いたことがあります。
贋作自体を排除する構造ではなくて、なんなら「贋作としての価値」を上げることもできます。ただ、「真作」と偽って贋作を出すのは詐欺ですよね。それではマーケットが良くなるわけがないんです。