Close RECOMMEND

世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

「スタートバーン」CEO 施井泰平氏(左)と芥川賞作家・上田岳弘氏(右)

「2つ以上の専門分野を持つことの強み」が言われ始めている近年、実業 x クリエイティブで成果を結ぶ新しい才能として各界から注目を集めている人物がいる。上田岳弘。小説『ニムロッド』で第160回芥川賞を受賞した彼は、その登場によって「日本文学はB.U.(Before Ueda 上田以前)とA.U.(After Ueda 上田以後)に分かたれた」ともいわれる新星だ。

上田氏はまた、文学者としての「クリエイティブな発想」を武器に、最先端のIT企業の経営にも取り組む実業家であることでも知られている。本企画は、上田が、「クリエイティブな発想法」を基にして、社会にイノベーションを起こす各界のリーダーと対談するものである。

第5回は、ブロックチェーンを活用した新時代のアート流通・評価のインフラとなる「Startrail(旧名:Art Blockchain Network)」の構築をリードする「スタートバーン」CEO、施井泰平だ。矛盾もはらむアート市場旧来の価値担保システムへの新技術応用で、アート業界の課題に取り組む。


現代美術家からの起業、そのストーリーとは


上田岳弘:施井さんとはブロックチェーン関連のイベントで同席して、交流を深めてきました。僕は作家をやりながら会社の経営にも携わっているのですが、そういった意味でスタートバーンさんの「アート×ブロックチェーン」について、シナジー的に似ている分野だと思って興味があります。

施井泰平:僕も上田さんと似ているなと思っているのが、経営をやりながら、クリエイティブもやりながら、しかもテクノロジーにも関わっているところです。

もともと僕は現代美術家なんですが、テクノロジーを活用してアートの世界のインフラを作りたいと思って、2014年に起業しました。最初は単なるウェブアプリケーションを作っていましたが、ウェブアプリだけではどうしても解決できない課題を抱えていた時にブロックチェーンと出会い、参入したのが2016年です。その後継続的に、ブロックチェーンを使ったアートのインフラ作りに取り組んでいます。

上田:もともとアートを作りたい、というのが最初にあったのか、あるいはアートでビジネスという掛け算に興味があったのか、どちらですか。

null
「スタートバーン」CEO 施井泰平 Forbes_3_26_20203143

施井:圧倒的に前者ですね。幼い頃からアートがやりたくて、ビジネスには全く興味がありませんでした。今でもアートの延長線で、ネットビジネスを司っている仕組みをアートのツールとして活用している、と言う認識です。

上田:アート、というのは、具体的に言うと絵ですか?

施井:いえ、実はちょっと恥ずかしいのですが、一番最初に影響を受けたのはダヴィンチなんです。発明家とかアーティストで、絵も描ける、を目指したいと。

上田:ダヴィンチ、僕も好きです。「真夜中に起きた人」と呼ばれて、中世の暗闇、誰も啓蒙されていない時代の天才だった、というところが面白くて。しんどかったんだろうなと思うんです。『私の恋人』という作品はモチーフとして、原始時代に自分だけ10万年後の未来を精緻に想像できるほどに頭がいいという究極の「真夜中に起きた人」を描いたのですが、それもダヴィンチから着想しました。

施井:ちなみに「スタートバーン」という僕らの会社名は、ドイツ語で「滑走路」という意味なんです。アートが飛び出すためには助走区間が必要で、そのための「滑走路」なんです。飛行機って必ずしも全部キレイに飛ぶわけじゃない、そんなところも面白いかなと。上田さんの作品『ニムロッド』にも「駄目な飛行機コレクション」で、飛ばなかったり、着陸できなかったりする飛行機が出てきますよね。

文・構成=石井節子 写真=帆足宗洋 サムネイルデザイン=高田尚弥

PICK UP

あなたにおすすめ