パウエル・ジョブズは今、パンデミック以降の景気減速の中で雇用の削減に踏み切り、世間の非難を浴びる富豪たちの仲間入りを果たした。
雑誌The Atlanticの従業員68人は今後、仕事を失うことになる。対象となる従業員は主にイベントやセールス、編集部門の人員だ。残りの従業員の給与の支払いも、年末までの間停止され、取締役の報酬は減額されるという。
この報せを受けて、特にメディア関係者の間から強い反発の声があがった。元ニューズウィーク編集者でフリー記者のZach Schonfeldは「大富豪であるパウエル・ジョブズは、68人のスタッフに3000年の間、給料を払い続けられるだけの冨を蓄えている」と書いた。
パウエル・ジョブズの広報担当者及びThe Atlanticは、この件についてのコメント要請に返答していない。
同様な批判は、ロサンゼルス・タイムズのオーナーのパトリック・スン・シオンにも向けられた。同社は今年4月に賃金カットや一時帰休措置を行っていた。メディア業界以外でも、英国のリチャード・ブランソンや、デラウェアノース会長のジェレミー・ジェイコブスなどの富豪のふるまいが非難を浴びている。
現在56歳のパウエル・ジョブズは、2011年のスティーブ・ジョブズの死去後、数十億ドル相当のアップルやディズニーの株式を相続した。パンデミックの発生以降も彼女の保有資産は、主にアップルの株価の上昇によって増大し続けている。
パウエル・ジョブズは2017年に、1億ドルと伝えられる金額でThe Atlanticの過半数株式を取得していた(彼女は自身が立ち上げた慈善団体Emerson Collectiveを通じThe Atlanticの株式を保有している)。
The Atlanticの業績はここ数年好調で、社員数を100人程度増やし、競合メディアに対抗しようとしてきた。同社は昨年9月にサブスクリプション制度を導入し、1月あたり新規で約2万人の有料会員を獲得している。
サイトの訪問者数も、人々の新型コロナウイルスへの関心が高まるにつれて伸びており、3月から4月にかけての訪問者数は1億3200万人に達していた。
しかし、パンデミックを受けて広告やライブイベントからの売上は急落し、The Atlanticは厳しい財政状況に追い込まれた。メディア業界では既に数万人が職を失っている。
経営の立て直しを図るThe Atlanticとオーナーのパウエル・ジョブズは、コスト削減のため、社員の解雇に踏み切った。