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海外事業家に聞く、人生の決め方

Tangent代表 吉本英樹氏 Photo by Ari Takagi

日本で生まれ育った日本人が海外で実力が認められる分野は、実はビジネス系よりもデザイン系に多いように感じる。

ビジネス系キャリアで成功するには、言語のハンデキャップだけでなくプレゼンテーション力、リーダーシップといった、日本の教育であまり重視されていないソフトスキルが海外では極めて重要となる。それと比べ、デザイン界では純粋にアウトプットのクオリティだけで評価される側面が強いからだ。

デザイン界の風の噂で聞いたのだが、現在プロダクトデザイン界で最も注目される若手デザイナーの1人が、私が住むロンドンにいるという。東大工学部から芸術分野では世界最高峰のロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業し、ロンドンでデザインエンジニアリングスタジオ「Tangent」を経営している吉本英樹さんだ。

エンジニアリングからアートへ。全く違う領域への転身に見えるが、自分の中では一貫した研究領域だったと振り返る吉本さんに、テクノロジーとアートの融合を目指したロンドンでの10年間を聞いた。


──2010年にロンドンに移住されたそうですが、それ以前はどのようなことをされていたのでしょうか。

東京大学工学部の航空宇宙工学科で学び、大学院は航空宇宙工学専攻で、修士過程まで進みました。もともとエアラインのパイロットになりたかったんです。航空機を機械として研究するよりも、航空機を使って世界を飛び回る方にロマンを感じていました。しかし、視力が原因でパイロットは断念しました。

そもそも航空宇宙工学専攻は、パイロットになるための学科ではありません。友人たちは、ヘリコプターのプロペラの騒音を削減させるためにはどうすればいいか空気力学で考えたり、ジェットエンジンの推進力の効率を上げるためにはどうしたらいいかを考えたりしていました。航空機、宇宙機、人工衛星などを作るために物理や数学を勉強する場所だったんです。

パイロットになれないのならどうしようかと思った時、自分の趣味である音楽と航空機を絡められないかと考えました。もともとジャズでトランペットを吹いていましたし、パソコンを使ってエレクトロミュージックのパフォーマンスもしていました。エンターテインメントの領域で航空機を使って何かをしようと。

当時はドローンも今ほどポピュラーではなく、せいぜいラジコン飛行機やラジコンヘリコプター、ラジコン飛行船みたいなものしかありませんでした。

修士の時に、ラジコンで操作する室内飛行船キットみたいなものを作りました。LEDで光る飛行船を飛ばし、音楽に合わせてDJのミキサーや様々なインターフェースを使って光や飛行船を操作するパフォーマンスを始めました。iPod TouchやiPhoneといったデジタルデバイスが出始めた頃です。その室内飛行船キットを2万円くらいで50個ほど手売りしましたが商品化するには至りませんでした。

文=クローデン葉子

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