デザインは大きな歴史の蓄積を踏まえてやっていくというよりは、個人の責任で突拍子もないところからどれだけユニークなアイデアをぶつけられるかどうか、なのです。結果として、あとから振り返ると、その蓄積が歴史になっていきます。
こうしたエンジニアリングとデザインの考え方の違いを経験、体得できたのがRCAに行って一番良かったことですね。
──その後、タンジェントを創業されていますが、それは自然な流れだったのですか。
RCAに6年ちかくいて、いろいろ作品を作って展示会に出品したり賞をとったりしたことが一つ一つ自信につながりました。そこで、クリエイティブの世界でも自分のアイデアで「ものづくり」をやりたいなという気持ちが強くなり、会社にしました。
Lexus Design Awardのグランプリを受賞した「Inaho」
──吉本さんはタンジェントで何を目指しているのでしょうか。
テクノロジーとクリエイティブを結ぶのが、一番興味があるところです。これまでは、エルメスやレクサス、ドバイのBurh Khalifaのプロジェクトなど、ブランドの歴史や商品のアイデアを僕がアート作品を通じて代弁するといったことを多く手掛けてきました。その中で、テクニカルな要素を使ってユニークな表現を作ることを考えてきました。
今後はより最先端のテクノロジーにも踏み込んでいきたいと思っています。テクノロジーを理解した上で、デザイナーとしての自分の視点をそこにぶつけ、世の中に対してどういうインパクトを持ち得るかというようなことを考える。研究をベースに本当に新しいものを作っていくような活動の比重を大きくしていきたいと思っています。