これを後押ししたのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛要請ではないだろうか。在宅時間が増え、動画市場の顧客は、若者中心から全世代へと拡大しつつある。特にYouTubeでのライブ配信は無料で配信方法も簡単と好評だ。
20億人にリーチするYouTube
2020年4月、人気YouTuberのHIKAKINが小池百合子都知事と共演。新型コロナウイルスにまつわる質疑応答が中心となった動画は公開後3時間で50万回再生されるなど大きな反響を得た。
今や世界で重要な影響力を持つ、グーグルの動画共有サービス「YouTube」。全世界の月間利用者数は20億人、日本国内でも6,200万人とSNSの中でも高い人気を誇る。
視聴者参加型のYouTubeライブ配信
2011年4月にリリースされたYouTubeのライブストリーミング機能「YouTube Live」。サービス開始当初は100人以上の登録者数を持つチャンネルのみが配信可能だったが、13年に全ユーザーへの開放を発表。ライブ動画配信の敷居を下げ、ライブ配信市場を大きく盛り上げた。
動画を編集後に配信する通常のYouTube配信とは異なり、リアルタイムでの配信が特徴。視聴者のコメントに反応するなど双方型のコミュニケーションが可能だ。ライブ配信にかかる利用料は無料。高画質な動画が配信できる上、配信動画は無期限で保存できる。配信方法も比較的簡単で、ライブ配信初心者にも人気が高い。
アカウント認証までは最大24時間
ライブ配信を行うには、まずアカウント認証を受ける必要がある。YouTubeのページ内にある「YouTube Studio」にて、「作成」ボタンもしくはライブ配信のアイコンをクリック。電話番号認証を行うよう案内が表示され、認証後にライブストリーミング機能が有効化される。
過去90日間に著作権侵害などライブ配信に関する制限を受けていないことが条件で、認証には最大24時間を要する。
アカウントが認証されれば、「作成」ボタンよりライブ配信の開始が可能に。「エンコーダ配信」のタブにて、タイトルや公開範囲を記入、サムネイルをアップロードすれば準備完了だ。
スケジュール設定にチェックを入れると、指定した日時からの生配信ができるようになる。視聴者に事前告知ができるため、告知なしで生配信を始めるよりも視聴者を獲得しやすい。
カメラ・マイク・配信ソフトがあれば簡単に配信可能
YouTubeのライブ配信に必要なものは、PCの他に、カメラ・マイク・配信ソフトのみ。PCの内蔵カメラでも十分撮影できるが、カメラ位置を自由に調整したい場合は別途カメラを購入する必要がある。マイクはヘッドセットやスタンドマイクを、自信の配信したい内容に合わせて選ぶと良い。
ライブ配信で特徴的なのは、PC上の画面や音を視聴者に共有するための配信ソフトが必要であるということ。配信ソフトは様々な種類があり、YouTubeは無料の配信ソフト「OBS Studio」を推奨。
配信ソフトでは、利用するサービスをYouTubeに設定する他、YouTubeの「ライブ配信の設定」から確認できるストリームキーを入力する必要がある。ライブ配信はスマホからも可能だが、チャンネル登録者数が1,000人以上であることが必要とされる。
投げ銭システム「Super Chat」
YouTubeライブ配信の収益として着目されているのが「Super Chat」というサービス。視聴者から配信者に対して、投げ銭のように100〜5万円を送ることができて、金額によってコメントの色や表示時間が変化する。
リアルタイムで多数のコメントが流れていく中、自身のコメントや質問がより配信者に気付いてもらいやすくなるのだ。視聴者が積極的にライブ配信に参加することができて、配信者の収益に繋がる仕組みとなっている。
企業・行政にも広がるライブ配信活用
コロナ禍で大きな痛手を負っているエンタメ界では、ライブ配信を活用した取り組みが相次ぐ。20年4月には、非営利団体「Global Citizen」と「世界保健機関(WHO)」がレディー・ガガとコラボして実現した慈善コンサート『One World: Together at Home』が開催され、YouTubeを始めとする多くのオンラインプラットフォームで生配信された。ポール・マッカートニーやテイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュなど世界的に有名なアーティストが参加し医療従事者へのエールを送った。
企業や行政もライブ配信活用に積極的である。NTTドコモやソフトバンクは数年前より新商品発表会をライブ配信で実施している。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、大阪府などの、就活生に向けた企業説明会をライブ配信する例も増えている。
会場に足を運ぶことのできない視聴者にもリーチできる上、ライブ配信であれば編集スキルも必要ない。リアルタイムで視聴者からの質問に答えられる、大規模会場を確保するコストが抑えられる、配信後も保存・公開することで視聴者が増え続けるなど、メリットは多い。