世界に比べて日本は「オンライン後進国」であり、急な措置なだけに現場の混乱は大きい。この緊急事態でも教育を止めないために、現場の当事者たちはどのような立場に置かれ、対応を迫られているのか。
全国に広がる学費減額を求める署名運動
多くの大学では、4月から新学期が始まるはずだった。しかし、3月からの新型コロナウイルス感染者数の急増を受け授業開始は延長され、また基本的に学期中の全ての授業をオンラインで行うという異例の事態となった。都内の複数の大学では、ゴールデンウィーク明けからオンライン授業を開始する。この状況で最も影響を受けているのは、学生たちだろう。
4月に入ってからネット上では、全国各地の大学生たちによる署名運動が立ち上がった。インターン生である筆者の所属する大学でも、同級生のSNSなどで署名の協力を求める投稿が見受けられた。オンライン上で署名収集及び届け出を行っているChange.orgには、20校以上の学生たちが署名を呼びかけており、中には1000人以上の賛同を得ているものもある。
学生たちの求めている処置とは、主に以下の3つの点だ。
・授業料、施設費の減額または返還
・授業料納入期間の延長
・授業料、施設費の内訳の公開
特に多くの学生が求めているのが、施設費の返還だろう。大学への入構を制限され、図書館や食堂などの施設を使うことができない中で、施設費を通常と同じ金額で取られていることに疑問を感じている学生は多い。また、授業の質に関して、オンラインでも授業を続けてくれる教授方への感謝は示しつつも、実技演習を含む授業や他学生との交流を制限される形態では、同じ質の教育を提供できるとは言えないと主張する。
オンライン授業への移行のために通信環境を整備しなければならず、その費用も多くの場合で自己負担だ。ただでさえ、バイト代で授業料を支払っていた学生の中には、店舗の休業要請で経済的に苦しんでいる人も少なくない。ある大学の署名キャンペーンには、学費の返還ではなく「大学側に学生の現在の意思を示す」ことが目的と示されており、学生たちの悲痛な想いが感じられる。
もちろん、学生たちの悲痛の声は大学側にも届いている。国際基督教大学(ICU)に通う筆者の元に、大学側から1通のあるメールが届いた。