興味深いのは、薬局、救急受付センター、ガソリンスタンド、運送会社、新聞、ラジオ、テレビ局などの従業員のほか、パン屋の従業員はこれまで外出禁止の対象外となっていることだ。パン屋? と不思議に思われるかもしれないが、トルコ人が一日の食事の中でもっとも大切にしている朝食に、焼きたてのパンは欠かせない。
外出禁止令以外にも、トルコ当局はこの事態に様々な対策を講じてきた。以下はその一例だ。
・トルコへの帰国・入国後14日間の隔離
・国際便・国内便の停止
・飲食店や商業施設の一時営業停止
・65歳以上と20歳以下の外出禁止
・大学を含む全ての学校の休校
・市場、スーパーマーケット、ショッピングセンター等でのマスク着用(義務化)
・オンライン申請者に対するマスク毎週5枚ずつの無償提供、同時にマスクの販売禁止
・県をまたぐ移動の禁止
・新型コロナウイルス関連検査及び治療の無償化
成田への直行便も3月25日を最後に停止し、運行は再開されていない。7月にはトルコ航空によるイスタンブールから羽田への直行便が開設される予定だが、影響が無いことを願うばかりだ。
砂糖祭に向けて「大規模作戦」開始
外出禁止令が出ている最中の4月24日から、イスラム教の断食月(トルコ語ではラマザン)が始まった。ラマザン開けの5月下旬には、3日間のシェケル・バイラム(砂糖祭)がある。日本における盆や正月にあたる、トルコ人にとって大切な行事だ。例年、多くの人が家族と過ごすために帰省したり、旅行に出かけるため、移動が増える時期でもある。
トルコ政府は、海外にとどまる自国民がこの時期を自国で過ごすことができるように、「大規模作戦」を開始した。4月20日から28日にかけ、59カ国から195便のチャーター機を飛ばすというものだ。帰国者は2週間、学生寮などで隔離されるが、外出制限が解かれていれば、バイラムには家族と過ごせるという日程だ。
感染拡大の勢いが止まらない中、この措置が吉と出るか凶と出るか今はまだわからないが、海外で不安な気持ちで過ごしていたトルコ人にとっては嬉しい知らせであろう。エルドアン大統領は、ラマザン中も感染拡大抑止策を継続し、「5月下旬のバイラム後に、通常の生活に移行することを目指す」と強調している。