「GW、離れて暮らす高齢の家族のためにできること」在宅医の佐々木医師が語る

患者を往診する佐々木淳医師(左)、小田駿一撮影


──GW前に伝えたいことを教えてください。

お願いしたいのは、外出の自粛、正しくは人との接触をできる限り8割以上減らすこと。7割では不十分です。

外出して日光を浴びたり、運動をしたりすることは、身体の健康だけでなく、メンタルヘルスのうえでも大切です。外出はしていいと思いますが、人との距離を保ち、おしゃべりをせずに静かに過ごすなど、上手に安全にやりましょう。

新型コロナは2週間頑張ればいなくなる、というわけではありません。これから先、ワクチンが完成して世界に流通するまでは、社会的距離の確保は、多少緩めることがあっても、ある程度必要になります。

仕事や友達との付き合い方、夜の楽しみ方も今のままでは難しいでしょう。自粛で我慢させられているのではなくて、みんなで知恵を絞って楽しむ方法や、新しいサービスやプロダクトを生み出すとチャンスと捉えて、新しい社会の提案ができるといいと思います。

新型コロナ患者が増えれば、津波のように医療機関に押し寄せますが、その波はいつか引きます。しかし、超高齢化・重老齢化という波は引くことはありません。東京には現在160万人の後期高齢者がいます。今後も確実に増え続け、10年後にはその多くが医療を必要とします。彼らが救急車や入院病床を占拠するようになったら、東京の急性期医療は破綻するでしょう。いまの新型コロナはその予行演習のようなものだと考えています。

それを防ぐことが我々のチャレンジです。医師と診療所を増やして、2025年までに約3万人の要介護高齢者を自宅で診られるような体制をつくるのが目標です。高齢者が街にたくさんいるという状況に最適化させた、地域の新しいプライマリ・ヘルスケアの仕組みを実現したいと思います。


ささき・じゅん◎1975年、京都府生まれ。98年筑波大学医学専門学群卒業、三井記念病院内科入局。2003年東京大学医学系研究科博士過程入学。2006年MRCビルクリニック開設。08年同クリニックを悠翔会と改名。Forbes JAPAN 2017年10月号にて『「患者満足度」最下位の日本で「臨終」に希望を見た男』掲載。

構成=成相通子、写真=小田駿一

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