カンヌ映画祭も中止? 新型コロナで危機、映画バイヤーの切実な想い

カンヌ国際映画祭の様子(c) Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF


「文化とは、他者と一緒にいること」


「文化とは、他者と一緒にいること」。これは、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の言葉だ。5月22日に最新作『その手に触れるまで』の公開を控えた監督にZOOMインタビューをした際、私たちビターズ・エンドに残してくれた。カンヌ国際映画祭で2度のパルムドール受賞を誇る、世界的な名匠だ。公開に合わせて来日予定だったが、新型コロナウイルスの影響で叶わなかった。
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「その手に触れるまで」(c) Les Films Du Fleuve – Archipel 35 – France 2 Cinéma – Proximus – RTBF、5/22(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー予定

私は学生のころ、ダルデンヌ兄弟監督の『ある子供』という映画を映画館で観た。若いカップルが刑務所で向かい合い、涙が溢れ出すところで映画は終わる。その2人を見て、心が震えて止まらなかった。他者の痛みや想いを自分のものとして感じられた初めての映画体験だった。あらゆる距離にいる、自分とは違う他者を想うこと。それは、社会で生きるということだ。

とにかくいまは命を第一に考えるべきときだ。その上で、映画が個人の人生を、そして社会を豊かにしてくれるものだという思いは、やはり揺らがない。
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状況によっては、上映を待っている映画たちが日の目を見なくなってしまう可能性もあるし、出口が見つからなければ新たな映画の買い付けもできなくなる。不安は尽きない。

しかし、大切なのは、この危機的状況を乗り越えて、オンライン・オフラインを問わず、これまでのように映画が社会的な役割を発揮する場をどう確保するか、つくっていくか。それが、私たちの仕事で、いま一番問われていることだと思う。

表現者はどんな状況でも表現をやめないと信じている。そして、今後も私たちを楽しませ、新しい発想や共存の術を与えてくれるだろう。垣根を越えて、その方法を探っていきたい。

連載:独立系配給会社と観る「映画のいま」
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文=伊藤さやか

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