これによりチャイムは、家賃や光熱費の支払いに苦慮し、一刻も早く現金を入手したい人たちを支援する。同社は米国で最も評価額が高いデジタル銀行で、直近では60億ドル(約6500億円)の評価額で7億ドルをベンチャーキャピタルから調達していた。
チャイムの利用者数は昨年末時点で推定330万人とされていた。今回の前借り金プログラムへの参加にあたっては、チャイムを給与の支払先として利用していることが必須となる。さらに、過去34日以内に250ドル以上の給与支払いを受けていることが条件だ。
同社は以前から、前借り枠を用意していたが、これまでは最低500ドル以上の給与支払いを受けていることが条件だった。チャイムはこの条件を250ドルに引き下げ、感染拡大の影響で賃金が減少した人々を救おうとしている。
また、前借りを受けられるユーザーは、2019年度の税金の還付請求を提出済みで、払い戻しをチャイムのアカウントで受けた者に限定される。チャイムは、これらの条件を満たすユーザーの中から10万人をランダムに抽出し、前借り枠をオファーする。
これらの基準を設けることで、チャイムは、非会員が前借り金を目当てにアカウントを作ることを防止し、ある程度のリスクを回避しようとしている。しかし、利用者に支払われる200ドルは、法的には貸付金として認められず、返済が滞ってもチャイム側に督促する手段はない。さらに、チャイムは返済遅延を信用情報機関に報告しないという。
つまり、チャイムは合計で2000万ドル(約22億円)に達する資金を、リスクをとりつつ貸し出すことになる。チャイムはこれまでSpotMeと呼ばれる前借りサービスで、45ドルから100ドル程度を貸し出してきたが、今回のプログラムでその枠を2倍に拡大することになる。
「当社がリスクを抱えることになることは、もちろん承知している。しかし、これは計算の上で受け入れを決定したリスクだ」とブリットは話した。
チャイムはこれまでのところ、感染拡大による経済的ダメージを被っておらず、「先週も新規で5人か6人の社員を採用した」という。「3月は一年を通じて、最も決済ボリュームが高まり、売上を伸ばせる月だ」とブリットは話した。チャイムの昨年の売上は、2億ドルを突破したとみられている。